本件放火の手段方法に関する第一審判決の判示につき、理由不備等の違法に当らないとした原判決の判断に誤があるとは認められない。 (注、第一審判決の判示) 「……右生石灰に水を注入して之を発熱させ、前記羽目板、木箱、ガソリン類等の可燃物に引火させる方法によつたものか或はその他何等かの手段方法により、同家屋に火を放ち……」
放火罪について択一的事実摘示の方法が違法でないとされた事例
刑訴法335条1項,刑訴法378条4号
判旨
証拠同意(刑訴法326条)がなされた供述調書については、憲法37条2項が保障する反対尋問権の侵害の問題は生じない。また、取調官による強要の事跡が認められない限り、自白の任意性に関する憲法38条の違反も認められない。
問題の所在(論点)
被告人が同意した供述調書の証拠採用は、憲法37条2項(反対尋問権)を侵害するか。また、具体的な強要の事実がない状況で、自白の任意性欠如を理由とする違憲主張(憲法38条1項・2項)は認められるか。
規範
被告人又は弁護人が証拠とすることに同意(刑訴法326条1項)した供述調書については、証拠能力が付与される。この場合、反対尋問の機会を放棄したものと解されるため、憲法37条2項(証人尋問権)違反の問題は生じない。また、憲法38条1項及び2項の自白排除法則については、記録上、供述を強要された事跡がうかがわれない限り、その適憲性が担保される。
重要事実
被告人が放火罪に問われた事案において、第一審にて提出された各供述調書に対し、被告人側は証拠とすることに同意していた。しかし、上告審において弁護人は、当該調書の採用が憲法37条2項(反対尋問権)に違反し、また取調官による供述の強要があったとして憲法38条1項、2項に違反すると主張した。
事件番号: 昭和57(あ)302 / 裁判年月日: 昭和58年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法321条1項2号後段に基づき検察官面前調書を証拠採用した後、弁護人による当該供述者の証人尋問請求を却下したとしても、憲法37条2項の証人審問権を侵害するものではない。 第1 事案の概要:被告人の公判において、証人Aの検察官に対する供述調書が、第一審公判期日における証言と相反するか実質的に…
あてはめ
本件では、問題となっている各供述調書について、被告人側が証拠とすることに同意を与えている。したがって、反対尋問の機会を自ら放棄したものといえるため、証人尋問権侵害の前提を欠く。また、記録を精査しても、被告人が取調官から供述を強要された事跡は認められない。したがって、任意性に疑義を生じさせる特段の事情は存在せず、自白排除法則に抵触するとはいえない。
結論
本件各供述調書の証拠採用は、憲法37条2項、38条1項・2項のいずれにも違反しない。
実務上の射程
同意書面(326条)の証拠能力と伝聞例外の関係を論じる際、憲法上の権利放棄という観点から補強する際に活用できる。また、自白の任意性主張における「強要の事跡」の有無という判断基準を提示している。
事件番号: 昭和28(あ)5524 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、裁判所に対して被告人側が申請した証人をすべて尋問することを義務付けるものではなく、不必要と認められる証人の尋問を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人側は、特定の証人の尋問を申請したが、裁判所によって不必要であるとして却下された。弁護人は、このような裁判所の措…
事件番号: 昭和31(あ)4524 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第1回公判期日前に行われる裁判官による証人尋問(刑訴法228条1項)において、被告人側の立会権は保障されるものの、被告人自身に代わり弁護人が立ち会い反対尋問を行っている場合には、憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は放火同未遂の罪で起訴された。第1回公判期日前に、検察官の請求によ…