判旨
勾留処分の違法は、それ自体に対して別途の救済方法によるべきであり、仮に勾留が違法に継続されたとしても、そのことから直ちに爾後の手続すべてが違法となるわけではない。
問題の所在(論点)
勾留処分に違法がある場合、その違法性は爾後の手続(公判手続等)に影響を及ぼし、手続全体を違法ならしめるか。また、証人不在でなされた証人尋問手続等が違憲といえるか。
規範
先行する勾留手続に違法があったとしても、その違法が当然に後続の公判手続等に承継されるものではない。先行手続の違法に対しては、準抗告や勾留取消しといった個別の救済手続を通じて争われるべきであり、その違法を理由として爾後の手続すべての違法を基礎付けることはできない。
重要事実
被告人が勾留された状態で行われた刑事裁判の手続において、弁護人は勾留処分の違法性を主張し、それが憲法34条後段(不当な拘禁の禁止)に違反すると主張した。さらに、証人尋問手続等の第一審手続が憲法37条2項前段(証人喚問・審問権)に違反するとして、有罪判決の破棄を求めて上告した。
あてはめ
勾留手続の適法性と爾後の公判手続の有効性は別個の問題である。本件において、仮に勾留の継続に違法があったとしても、それは勾留に対する直接の救済方法(勾留理由開示や準抗告等)によって是正されるべき性質のものである。したがって、勾留の違法を理由に公判手続や判決自体の違法をいうことはできず、上告理由には当たらない。また、刑訴法304条の2に基づく証人尋問手続についても、憲法37条2項に反しないとする大法廷判決の趣旨に照らし、適法である。
結論
勾留処分の違法は、爾後の手続すべてを違法にするものではないため、これを理由とする上告は認められない。また、刑訴法の規定に従った証人尋問手続も違憲ではない。
事件番号: 昭和56(あ)1044 / 裁判年月日: 昭和57年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条、28条、31条違反の主張が、実質的に事実誤認や単なる法令違反をいうものである場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、憲法14条(法の下の平等)、28条(労働基本権)、31条(適正手続の保障)違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、…
実務上の射程
刑事手続の「違法の承継」が否定される典型例として、勾留の違法が公判手続に及ばないことを示す射程を有する。答案上、身柄拘束の違法が公判請求や公判手続に及ぶかが問われた際、原則として否定する根拠として活用できる(ただし、重大な違法がある場合の公訴棄却の可否については別途検討を要する)。
事件番号: 昭和27(あ)4609 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」の意義については、既に確立された当裁判所の判例の趣旨に照らし、憲法違反とは認められない。 第1 事案の概要:被告人が、憲法違反および判例違反を理由として上告を申し立てた事案である。弁護人は、原判決のプロセスにおいて憲法37条1項(公平な裁判所の裁判を受ける権利)…
事件番号: 昭和31(あ)2519 / 裁判年月日: 昭和31年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法382条の2に基づき事実誤認を主張する場合、控訴審において新たな証拠調べを求めるには、同条所定の疎明資料の提出を要する。必要な資料を提出せずにされた証人尋問の申請を却下することは、適法な証拠決定であり違法ではない。 第1 事案の概要:弁護人が、控訴趣意書において事実誤認を主張し、その立証…
事件番号: 昭和27(あ)4473 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合等の活動が刑法上の正当行為(刑法35条)として違法性を阻却されるためには、その行為が憲法28条の趣旨に照らし、正当な団体交渉の目的達成のために必要かつ相当な範囲内で行われることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らの所為が刑法上の犯罪構成要件に該当する一方で、被告人側は当該行為が憲法2…
事件番号: 昭和57(あ)254 / 裁判年月日: 昭和57年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別件逮捕・勾留の違法性が主張されたとしても、原判決が証拠の信用性判断の過程でその目的の存否に言及したにとどまる場合には、捜査自体の憲法適合性を判断したものとはいえず、違憲を理由とする適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が逮捕・勾留された際、その目的が不当であったとして弁護人が違…