道路交通法第四四条中、本件に適用されたのは三号であるが、同号には「横断歩道の手前の側端から前に五米以内の部分」とあつて、横断歩道の手前のみの駐車が禁止されているにすぎず、横断歩道を通過した先は、横断歩道の側端から五米以内の地点であつても、この規定の駐車禁止の対象とはなつていない。
道路交通法第四四条第三号にいう「駐車」に当らないとされた事例。−横断歩道を通過した先の側端から五米以内の場合−
道路交通法44条3号
判旨
道路交通法44条3号(当時)の定める駐車禁止場所は「横断歩道の手前の側端から前に5メートル以内の部分」に限定され、横断歩道を通過した先の地点は同号の禁止対象には含まれない。
問題の所在(論点)
横断歩道を通過した直後の地点に駐車した行為が、道路交通法44条3号にいう「横断歩道の手前の側端から前に五メートル以内の部分」における駐車禁止違反に該当するか。
規範
道路交通法44条3号(現行も同様の構造)における駐車禁止場所の範囲は、条文の文言上「横断歩道……の手前の側端から前に五メートル以内の部分」と規定されている。したがって、当該禁止規定の適用範囲は、車両の進行方向から見て横断歩道の手前側に限定され、横断歩道を通過した後の地点は含まれないと解すべきである。
重要事実
被告人は、普通貨物自動車を運転し、道路上の横断歩道標識から1メートルの地点に2分間駐車した。しかし、当該駐車地点は、進行方向において横断歩道を越えた先(通過後)の地点であった。原審の略式命令は、この事実に対し道路交通法44条等を適用し、法定の駐車禁止場所に駐車したものとして罰金4,000円を言い渡した。これに対し、検事総長が非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件において被告人が駐車した地点は、横断歩道標識から1メートルの距離にあるが、現認報告書によれば「横断歩道を越えた先1メートル」の地点である。同法44条3号の文言は、あくまで横断歩道の「手前」の側端から5メートル以内と定めているにすぎない。そうすると、横断歩道を通過した後の地点については、たとえ側端から5メートル以内であっても、同号が定める駐車禁止場所としての定型的な該当性を欠くというべきである。
結論
被告人の行為は、道路交通法44条3号の罪とならない事実である。したがって、これを有罪とした原略式命令には法令適用の違法があり、被告人は無罪とされるべきである。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、道路交通法の禁止規定を文言の範囲を超えて拡張解釈することを否定した事例である。司法試験においては、行政刑法の解釈において文言の反対解釈や厳格な解釈が求められる場面、あるいは非常上告の対象となる「罪とならない事実」の判断の具体例として参照し得る。
事件番号: 昭和63(あ)1450 / 裁判年月日: 平成元年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として実質的に量刑不当を主張するものや、原判決に対する論難ではない憲法違反の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人は、第一点として憲法違反を主張したが、その実態は量刑が不当であるという主張であった。また、第…