公職選挙法第一四二条による選挙運動のために使用する文書図画の頒布の規制は、単に公職の候補者に対してのみならず、何人に対しても及ぶものと解すべきであり、かく解しても、同条が所論憲法の諸規定に反しないことは、当裁判所大法廷判例(昭和三七年(あ)第八九九号同三九年一一月一八日判決、刑集一八巻九号五六一頁)の趣旨に徴して明らかである。
一 公職選挙法第一四二条の適用範囲。 二 同条の合憲性。
公職選挙法142条,憲法15条,憲法21条,憲法31条
判旨
公職選挙法142条による選挙運動用文書図画の頒布規制は、公職の候補者のみならず「何人」に対しても適用される。この規制は、憲法15条、21条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法142条が定める文書図画の頒布規制の対象が、候補者以外の第三者(何人)にまで及ぶか。また、そのように解することが憲法15条、21条、31条に違反しないか。
規範
公職選挙法142条が定める選挙運動のための文書図画の頒布規制は、公平かつ適正な選挙を確保するという公共の福祉に基づく正当な目的による制約であり、その適用対象は公職の候補者に限られず、何人に対しても及ぶ。このような広範な規制であっても、憲法21条等の諸規定に反しない。
重要事実
被告人が、公職選挙法の定める規制に反して選挙運動のために使用する文書図画を頒布したとして、同法142条違反に問われた事案。弁護人は、同条の規制が候補者以外の第三者にまで及ぶと解することは、表現の自由(憲法21条)や適正手続(同31条)等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
判決文によれば、公職選挙法142条の文言および趣旨に照らせば、同条による規制は単に公職の候補者に対してのみならず、「何人」に対しても及ぶものと解される。そして、このような規制の合理性については、既に確立された大法廷判例(昭和39年11月18日判決)の趣旨に照らせば、選挙の公正を確保するための必要かつ合理的な制約といえる。したがって、第三者による自由な文書頒布を制限したとしても、表現の自由の不当な侵害や、適正手続の逸脱には当たらないと評価される。
結論
公職選挙法142条の規制は第三者にも及び、憲法15条、21条、31条に違反しない。本件各上告は棄却される。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限が「何人」にも及ぶことを確認した判例である。答案上は、選挙の公正(憲法15条)と表現の自由(21条)の調整において、公職選挙法の個別規定が第三者に適用される際の合憲性根拠として、昭和39年大法廷判決を引用する形で活用できる。実務上も、候補者以外の運動員や市民によるビラ配布等の規制根拠として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)3929 / 裁判年月日: 昭和30年5月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法142条及び146条による文書図画の配布制限は、選挙の公正を確保し、不当な費用の発生や混乱を防止する目的として合理的な範囲内のものであり、憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名が、公職選挙法142条(文書図画の頒布制限)及び146条(文書図画の配布制限等)に抵触する行為を…