判旨
上告趣意において憲法違反を主張していても、その実質が単なる法令違反、事実誤認または量刑不当の主張にすぎない場合は、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
憲法違反を形式的に主張しつつ、その実質が事実誤認や単なる法令違反にすぎない上告の申立ては、刑事訴訟法上の適法な上告理由を構成するか。
規範
最高裁判所への上告が認められるためには、刑事訴訟法に定められた適法な上告理由(憲法違反または判例違反)が存在することを要する。憲法違反の主張を形式的に掲げていても、その実質的内容が法令違反、事実誤認、量刑不当など、法が上告理由として認めていない事項を争うものである場合には、同法第405条の定める適法な上告理由とは認められない。
重要事実
被告人の弁護人は、憲法13条、31条、34条への違反を理由に上告を申し立てた。しかし、具体的な主張内容は、第一審判決が判示した事実の軽重や情状の認定が不当であるとする点や、原判決の認定が不当であるとする事実誤認の主張、さらには単なる法令の適用誤りや量刑の不当を訴えるものであった。
あてはめ
本件の上告趣意は、形式上は憲法の条項を引用しているものの、その実質は「単なる法令違反、事実誤認および量刑不当の主張」にとどまる。原判決が枉法収賄罪の成立を認めたわけではなく事実の軽重を判断したにすぎないという主張も、単なる事実誤認の指摘である。このように、憲法問題としての実質を欠き、刑事訴訟法405条所定の事由を実質的に備えていない主張は、上告理由の体をなさないと評価される。
結論
本件上告は適法な理由に基づかないため、刑事訴訟法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の上告審の構造(事後審・制限上告制)を理解するための基礎的な判決である。答案上は、上告理由を検討する際に「憲法違反」という標榜に惑わされず、その実質を峻別すべきことを示す文脈で使用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4306 / 裁判年月日: 昭和30年8月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】違憲を主張する上告趣意であっても、その実質が単なる法令違反や量刑不当の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。上告趣意の第一点および第二点は違憲を主張するものであったが、その実質は法令違反の主張であり…