最高裁判所の意見が大審院のした判例に反する場合において、その裁判は、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第六項によつて、小法廷ですることができる。
裁判所法第一〇条第三号同法施行令第五条と最高裁判所裁判事務処理規則第九条第六項との関係
裁判所法10条3号,裁判所法施行令5条,最高裁判所裁判事務処理規則9条6項
判旨
法律の不知について、行為者が自己の行為が罪にならないと信ずるにつき相当の理由がある場合には、その誤信に重大な過失がなかったとして、責任故意が否定され得る。
問題の所在(論点)
刑法38条3項但書の解釈に関連し、法律の不知による誤信が故意を阻却するための要件、および「相当の理由」の具体的判断基準が問題となる。
規範
法律の不知(刑法38条3項)に関して、自己の行為が罪にならないと誤信したとしても、原則として故意は阻却されない。しかし、その誤信について「相当の理由」がある場合には、例外的に故意を阻却し、犯罪が成立しない余地がある。この「相当の理由」の有無は、行為者が罪にならないと信ずるにつき重大な過失がなかったといえるか否かという観点から判断される。
重要事実
被告人が、自己の行為が法律上許容されると誤信して行為に及んだ事案において、その誤信に正当な理由があるかが争点となった。具体的には、被告人が「駐在所の巡査から、本件行為が罪にならない旨の説明を受けた」と主張し、それが誤信の根拠(相当の理由)にあたると訴えたものである。しかし、原審(控訴審)は、証拠上そのような事実(巡査の言動)があったとは認められないと判断した。
あてはめ
最高裁は、先行する判例(昭和35年4月26日判決等)を引用しつつ、誤信に「相当の理由」があれば違法性を阻却(または責任故意を否定)し得るという枠組みを前提とした。本件では、被告人が相当の理由の根拠として主張した「巡査の教示」という事実が、原判決の認定によれば証拠上認められない。したがって、誤信を正当化する事実上の基礎が存在しない以上、被告人が「罪にならないと信ずるについて重大な過失がなかった」とはいえず、相当の理由があるとの主張は前提を欠く。
結論
被告人の行為が罪にならないと信ずるにつき相当の理由があるとは認められず、上告は棄却された。
実務上の射程
司法試験においては、法律の錯誤(禁止の錯誤)の論点として重要である。38条3項の解釈として「相当の理由」がある場合に故意を阻却する(判例の立場は厳格責任説に近いとされる)構成をとる際、その具体的判断要素として「公的機関の見解」などの事実を拾い、それに対する信頼に「重大な過失がないか」を検討する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)2654 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、原判決の事実誤認を主張するものにすぎず、適法な上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案であるが、その主張内容は原判決の事実認定に誤りがあるとするものであった。 第2 問題の所在(論点):被告人が主張する事実誤認の訴え…