判旨
控訴審が職権により第一審判決の法令適用違反を理由として自判する場合、量刑も控訴審独自の判断で行うべきであるから、弁護人が主張した量刑不当の控訴趣意について個別の判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審が職権によって第一審判決を破棄し自判する場合において、控訴趣意として主張されていた量刑不当の点について、判決理由中で個別に判断を示す必要があるか。判断を省略したことが裁判を受ける権利を侵害する違法となるかが問題となる。
規範
控訴審が刑事訴訟法に基づき職権で第一審判決の法令適用の誤りを破棄し、自ら有罪判決を下す(自判する)場合、量刑についても控訴審独自の判断により相当な刑を決定すべきものである。したがって、当該自判において独自に量刑を定める以上、控訴趣意に含まれる量刑不当の主張に対しては、個別に明示的な判断を与える必要はない。
重要事実
第一審判決に法令の適用の誤りがあるとして、控訴審が職権により第一審判決を全部破棄し、改めて有罪の判決を下した。この際、控訴審判決は弁護人が主張していた「量刑不当」の控訴趣意について、特段の判断を示さなかった。これに対し弁護人は、控訴趣意に対する判断を省略したことは違法であり、憲法32条(裁判を受ける権利)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原審が法令適用の誤りを理由として第一審判決を全部破棄した上で、自ら有罪の判決を下している。この場合、量刑は原審が独自の職権に基づき、事件の全体像に照らして最も相当と認められる範囲で決定される。原審が自らの判断により刑を決定した以上、それは論理的に弁護人の量刑不当の主張を含めて検討された結果といえ、重ねて量刑不当の主張に対する是非を判決書に記載する必要はないと解される。
結論
控訴審が職権で第一審判決を破棄・自判した以上、量刑不当の控訴趣意に判断を示さなかった原判決に違法はなく、上告は棄却される。
事件番号: 昭和32(あ)3258 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
町村合併によつて新たに成立した町の町役場戸籍課長兼広報宣伝係である地方公務員が、その町の分町活動の活溌化に対抗し町を育成一本化するため分町反対派の町議会議員有志の結成した町育成本部なる団体の依頼により、町村合併による大町村の有利な所以を宣伝放送する行為は、地方公務員法第三五条及び第三六条に違反しない
実務上の射程
控訴審の自判時における理由記載の程度に関する判例である。法令違反等で破棄自判する際は、量刑を含め一から裁判所が構成し直すため、特定の控訴趣意(量刑不当)への応答義務が相対化されることを示している。答案上は、控訴審の審判範囲や理由不備の有無を論じる際の補助的論拠として活用できる。
事件番号: 昭和50(あ)1861 / 裁判年月日: 昭和51年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意における憲法違反等の主張が、原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原判決及び一審判決の判断に、憲法37条1項(被告人の権利)や82条(裁判の公開)の違反、および判例違反があるとして上告を申し立てた事案。しかし、…
事件番号: 昭和31(あ)2519 / 裁判年月日: 昭和31年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法382条の2に基づき事実誤認を主張する場合、控訴審において新たな証拠調べを求めるには、同条所定の疎明資料の提出を要する。必要な資料を提出せずにされた証人尋問の申請を却下することは、適法な証拠決定であり違法ではない。 第1 事案の概要:弁護人が、控訴趣意書において事実誤認を主張し、その立証…
事件番号: 昭和27(あ)3195 / 裁判年月日: 昭和28年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張・判断されなかった第一審判決の訴訟手続上の違法については、上告審において新たに主張することはできず、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、第一審判決に訴訟法上の違反があるとして上告を申し立てた。しかし、当該違反の事由については、原審(控訴審)において控訴趣意…
事件番号: 昭和56(あ)1044 / 裁判年月日: 昭和57年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条、28条、31条違反の主張が、実質的に事実誤認や単なる法令違反をいうものである場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、憲法14条(法の下の平等)、28条(労働基本権)、31条(適正手続の保障)違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、…