商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取り扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきであり(昭和三四年(あ)第九〇三号同三六年三月二八日第三小法廷決定刑集一五巻三号五九〇頁)、同条前段の預合罪の構成要件が所論のように不明確であるということはできない。
適法第四九一条前段の預合の意義。
商法491条
判旨
旧商法における預合罪の構成要件は、株金の払込を仮装するために、払込取扱機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解されるため、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
旧商法491条前段(現行会社法965条)にいう「預合」の意義が明確か。また、同条の規定が罪刑法定主義(憲法31条)に違反しないか。
規範
預合とは、会社設立等の際における株金の払込を仮装するために、株金払込を取り扱う機関(銀行等)の役職員らと通謀して、現実の資金移動を伴わずに帳簿上の操作等によって払込があったかのように装う仮装行為をいう。
重要事実
被告人が、会社法(旧商法)上の役員等の地位にあり、株金の払込を仮装する目的で、払込取扱機関の役職員と通謀して「預合」を行ったとして、旧商法491条前段(現行会社法965条参照)の預合罪に問われた事案である。被告人側は、同条の構成要件が不明確であり憲法31条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和41(あ)961 / 裁判年月日: 昭和42年12月14日 / 結論: 破棄差戻
増資にあたり、株式引受人の会社に対する債権が真実に存在し、かつこれを弁済する資力が会社にある場合には、会社が株式払込取扱銀行から金融を受けて株式引受人に対する債務を弁済し株式引受人が右弁済金を引受株式の払込金に充当するという払込方法がとられたとしても、直ちに商法第四九一条の預合罪および応預合罪が成立するとはいえない。
あてはめ
判例によれば、「預合」の意義は、株金の払込を仮装するために、払込取扱機関の役職員らと通謀してなす仮装行為であると一義的に確定することが可能である。したがって、行為者がどのような行為が禁止されているかを予見することは困難ではなく、その構成要件が不明確であるとはいえない。本件においても、この解釈に従い、被告人の行為は同条の構成要件に該当すると評価される。
結論
預合罪の構成要件は明確であり、憲法31条に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
会社法上の払込仮装罪(預合罪・見せ金罪)を検討する際の基礎的な解釈指針となる。本件は旧商法の事案だが、現行会社法965条における「預合」の意義を解釈する際にも、払込取扱機関との「通謀」と「払込の仮装」という核心的要素は維持されており、実務上も同様の枠組みで判断される。
事件番号: 昭和31(あ)2109 / 裁判年月日: 昭和35年6月21日 / 結論: 棄却
一 商法第四九一条後段の応預合罪は、株金払込取扱期間の役職員が同法第四八六条第一項に掲げる者と通謀して株金の払込を仮装する行為をいう。 二 銀行の支店長甲が株式会社の設立発起人乙と通謀して株金払込を仮装するため、その方法として同銀行支店から預金者丙に融資しその金員を設立登記完了まで乙に貸与することを丙に承諾させた上、丙…
事件番号: 昭和31(あ)914 / 裁判年月日: 昭和36年12月20日 / 結論: その他
一 原審が証拠により適法に認定した事実によれば、被告人は、利殖の目的をもつて原判示第二の(一)の日時場所において貸主としてA名義を使用し、Bに対し月七分ないし八分の利率をもつて金三〇万を貸し付けたほか、同様の方法で三回にわたり、同判示得第二の(二)ないし(四)の金員を同記載の利率をもつて貸し付けたというのであり、客観的…
事件番号: 昭和31(あ)2217 / 裁判年月日: 昭和33年4月25日 / 結論: 棄却
商法第四八九条第二号違反の罪は同号所定の株式取得の効力如何にかかわりなく成立するものであり、また、株券の発行前たると否とを問わないものと解すべきである