商法第四八九条第二号違反の罪は同号所定の株式取得の効力如何にかかわりなく成立するものであり、また、株券の発行前たると否とを問わないものと解すべきである
商法第四八九条第二号違反の罪の成立
商法489条2号,商法210条
判旨
旧商法489条2号(現行会社法963条1項1号に相当)の特別背任罪等の罪は、所定の株式取得の効力の如何に関わらず成立し、また、株券発行の前後を問わず成立する。
問題の所在(論点)
旧商法489条2号(現行会社法963条1項1号相当)の罪の成否において、①当該株式取得の私法上の効力の有無、および②株券発行の有無が構成要件の充足に影響を与えるか。
規範
旧商法489条2号(取締役等の会社財産を利用した不正な株式取得)の罪は、当該株式取得行為の法律上の効力が有効であるか無効であるかを問わず成立する。また、対象となる株式について株券が発行されているか否かも、罪の成立に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人らは、旧商法489条2号に規定された取締役等の職務にありながら、会社の計算において不正に自己の株式を取得したとして起訴された。弁護側は、当該株式取得行為が法律上無効であること、あるいは株券発行前であることを理由に、犯罪は成立しないと主張して上告した。
事件番号: 昭和40(あ)2308 / 裁判年月日: 昭和41年4月19日 / 結論: 棄却
商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取り扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきであり(昭和三四年(あ)第九〇三号同三六年三月二八日第三小法廷決定刑集一五巻三号五九〇頁)、同条前段の預合罪の構成要件が所論のように不明確であるということは…
あてはめ
本罪の趣旨は、取締役等が会社の計算で不正に株式を取得し、会社財産の充実を損なう危殆を生じさせる点にある。したがって、私法上の取得行為が無効であったとしても、現実に会社の計算で株式取得の手続きが執られた以上、同条の禁止する行為に該当する。また、株式の譲渡や取得という実態は株券発行の有無にかかわらず発生し得るものであるから、株券発行前であっても本罪の成立を妨げるものではないと解される。
結論
株式取得の効力の如何や株券発行の前後を問わず、旧商法489条2号違反の罪は成立する。
実務上の射程
会社法上の罰則(特別背任や会社財産を危うくする罪)の検討において、私法上の行為の有効性と刑事罰の成否は別個の問題であるという構成を示す際に有用である。特に、現行会社法963条等の適用を論じる際の理論的根拠となり得る。
事件番号: 昭和28(あ)4183 / 裁判年月日: 昭和30年8月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上横領罪において、不法領得の意思が認められるためには、必ずしも自己の利得を図る目的は必要ではなく、委託の趣旨に反して権限なく所有者でなければできない処分をする意思があれば足りる。 第1 事案の概要:本件において、被告人は業務上占有していた物(詳細な物件の内容は判決文からは不明)について、本来の…
事件番号: 平成14(あ)1431 / 裁判年月日: 平成17年10月7日 / 結論: 棄却
商社の代表取締役社長がその任務に違背して巨額の融資を行った場合において,融資実行の動機は同社の利益よりも自己らの利益を図ることにあり,同社に損害を加えることの認識,認容もあったなど判示の事実関係の下では,特別背任罪における図利目的はもとより加害目的をも認めることができる。
事件番号: 昭和29(あ)1681 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】会社の代表者が、会社の業務として他人のために占有する物を、会社を代表して保管している場合、当該代表者個人に業務上横領罪の「自己の占有する他人の物」という要件が認められる。 第1 事案の概要:木炭の生産を業とする会社の代表取締役社長である被告人は、会社が生産した木炭を他者に売り渡し、その所有権が他者…