一 商法第四九一条後段の応預合罪は、株金払込取扱期間の役職員が同法第四八六条第一項に掲げる者と通謀して株金の払込を仮装する行為をいう。 二 銀行の支店長甲が株式会社の設立発起人乙と通謀して株金払込を仮装するため、その方法として同銀行支店から預金者丙に融資しその金員を設立登記完了まで乙に貸与することを丙に承諾させた上、丙をして融資にかかる右金員を会社の株式払込金として同銀行支店の別段預金口座に振替え払込をさせ、乙はこれにより銀行支店長甲名義の株式払込金保管証明書の交付を得て会社の設立登記を完了するや、即日乙において同銀行支店を支払銀行とする同額の小切手を振出して丙に交付し、丙はこれを同銀行支店に交付し、同銀行はこの小切手で株式払込の預金を払出し当初の丙の借入金の弁済に充当するため振替え決済をなし、もつて株金の払込を仮装する場合において、右甲の所為は応預合罪にあたる。
一 商法第四九一条後段の応預合罪の意義 二 応預合罪にあたる事例
商法491条,商法177条2項,商法175条2項,商法189条,非訟事件手続法126条1項,非訟事件手続法189条
判旨
応預合罪は、株金払込取扱機関の役職員らが会社設立の発起人らと通謀して株金の払込を仮装する行為をなすことで成立する。この通謀仮装行為の一環として第三者を介在させたとしても、払込仮装の実態がある以上、同罪の成立は妨げられない。
問題の所在(論点)
商法(当時)491条後段の応預合罪の成否において、株金払込取扱機関の役職員と発起人らとの間に第三者が介在している場合、または預金担保貸付の形式をとっている場合であっても「通謀して株金の払込を仮装」したといえるか。
規範
商法(当時)491条後段に規定される応預合罪は、株金払込取扱機関の役職員らが、同法486条1項に掲げる者(設立発起人等)と通謀して、株金の払込を仮装する行為をなすことを構成要件とする。本罪は、会社資本の充実を図り、会社設立時における資本の虚偽表示を防止することを趣旨とするため、払込の仮装という実態が認められる限り、形式的に介在する第三者の有無によってその成立が左右されるものではない。
事件番号: 昭和39(あ)1336 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
銀行支店長代理が架空の定期預金証書を作成し交付することは、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条にいわゆる「職務に関する行為」に当る。
重要事実
被告人は株金払込取扱機関(銀行支店)の役職員であった。被告人は、共犯者Bと共謀した上で、株式会社Cの設立発起人であるDおよびEと通謀し、株金の払込を仮装する行為に及んだ。その際、被告人らは直接的なやり取りだけでなく、Aという人物を介在させて預金を担保とする貸付の形式をとるなど、一連のスキームを通じて株金の払込を仮装した。弁護人は、Aを介在させたことや形式上の預金担保貸付であることを理由に、応預合罪の不当な拡張解釈であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人(銀行役職員)が発起人D・Eらと通謀し、C社の株金払込を仮装した事実は認められる。Aを介在させた点については、これは被告人らによる一連の通謀仮装行為の一環に過ぎず、実質的な払込仮装の事実に何ら消長を来すものではない。また、銀行支店からAへの預金担保貸付についても、その実態は発起人に対する株式払込金の融通としての実質を有するものである。したがって、これらを切り離して適法な資金貸付とみることはできず、全体として株金の払込を仮装する行為に該当すると評価される。
結論
被告人の行為は、商法491条後段の応預合罪を構成する。第三者の介在や貸付形式の利用は罪の成立を妨げない。上告棄却。
実務上の射程
会社法上の払込仮装(預合・見せ金)に関する議論において、形式的に第三者を経由したり、融資の形を整えたりしても、実質的に資本の充実を害する「払込の仮装」といえる場合には処罰の対象となることを示す。現代の会社法965条(応預合等の罪)の解釈においても、実質的な通謀の有無を判断する際の基準として参照できる。
事件番号: 昭和34(あ)903 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)5626 / 裁判年月日: 昭和31年2月29日 / 結論: 棄却
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律別表乙号二四の金融機関たる銀行の為す貸付業務は、金融緊急措置令第六条同施行規則第一三条および金融機関資金融通準則に基いて行われるものであつて、右法律第二条の経済の統制を目的とする法令により行う「統制に関する業務」である。
事件番号: 昭和40(あ)2308 / 裁判年月日: 昭和41年4月19日 / 結論: 棄却
商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取り扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきであり(昭和三四年(あ)第九〇三号同三六年三月二八日第三小法廷決定刑集一五巻三号五九〇頁)、同条前段の預合罪の構成要件が所論のように不明確であるということは…
事件番号: 昭和36(あ)1075 / 裁判年月日: 昭和38年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相互銀行は、金融緊急措置令8条にいう「銀行」に含まれると解するのが相当である。したがって、相互銀行の職員による不正行為に対し、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律2条を適用することは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:相互銀行の支店次長である被告人が、その職務に関して不正な行為を行った。検察官…