判旨
死刑の量刑判断において、犯行の残虐性、社会的影響、被告人の反社会的性格等を総合的に考慮し、諸般の有利な事情を斟酌しても死刑がやむを得ないと認められる場合には、その量刑は正当として維持される。
問題の所在(論点)
強盗強姦・殺人・死体遺棄・現住建造物等放火等の罪責を負う被告人に対し、死刑を適用した量刑判断が、刑事訴訟法411条2号(刑の量定が著しく不当)に該当するか。
規範
死刑の選択に際しては、犯行の態様(残虐性等)、動機、結果の重大性(殺害の数や方法)、社会的影響、被告人の性格および前科等の諸要素を総合的に考慮すべきである。被告人に有利な事情を斟酌し慎重に検討したとしても、刑の執行がやむを得ないと認められる場合には、第一審の死刑判決を維持した原判決に量刑不当の違法はない。
重要事実
被告人は、知人宅で借金を断られたことに憤慨し、現金を強奪。これを取り返そうとした女性に暴行を加えて失神させた後、強姦に及び、さらに犯行発覚を免れるため女性の首を絞めて殺害した。その後、時計を奪い、証拠隠滅のため同家に放火して女性の死体ごと焼却した。被告人側は鑑定書を根拠に強姦の事実を争い、量刑不当を主張して上告した。
あてはめ
本件犯行は、強盗から強姦、殺人、放火に至る一連の過程において、気絶した被害者を強姦した上で口封じのために殺害し、さらに死体を焼却するという残虐極まりないものである。社会的影響も極めて大きく、被告人の行動には高度の反社会的性格が認められる。鑑定結果において精液が検出されなかった点は、火熱の影響による消失の可能性が高く、自白の信用性を揺るがすものではない。被告人に有利な事情を考慮しても、極刑を選択することはやむを得ない判断である。
結論
被告人を死刑に処した第一審判決を是認した原判決は、著しく不当とは認められず、上告を棄却する。
事件番号: 昭和58(あ)140 / 裁判年月日: 平成元年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、結果の重大性、遺族の被害感情等の罪質及び情状を総合的に考慮し、その罪責がまことに重大であって、死刑の科刑がやむをえないと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、機会を異にして、手向かう術のない婦女2名を殺害した。各犯行は冷酷無情かつ残忍な態…
実務上の射程
永山基準(最判昭58.7.8)に先立つ死刑適用事案であり、犯行の残虐性や証拠隠滅の態様が重視されている。実務上、死刑の相当性を論じる際の「犯行態様の残虐性」や「罪質」の評価に関する先例として活用できる。
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…
事件番号: 平成4(あ)824 / 裁判年月日: 平成10年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、現住建造物放火等の事案において、犯行の計画性、態様の残虐性、結果の重大性、主導的役割、及び犯行後の再犯状況等を総合考慮し、死刑の選択を維持した一審判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は実弟と共謀し、金員強取の目的で住居に侵入。発見された住居人女性を殺害して金庫を強取し、帰宅した別の…
事件番号: 平成4(あ)168 / 裁判年月日: 平成9年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、および被告人の前科等を総合的に考慮し、酌むべき事情を十分に考慮しても罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、常習累犯窃盗罪により懲役3年6月に処せられ、仮出獄中の身であった…
事件番号: 平成11(あ)1115 / 裁判年月日: 平成16年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。 第1 事案の概要:被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を…