一 本件において、訴因変更の手続を要しないとした所論引用の原判示は、正当として是認し得る。 二 (本件公訴事実第一) 被告人は…多数の者と共謀の上…a町信号所において、多数の者と共同し、同信号所入口脇のガラス窓を殴打し、或いは投石し、更に窓枠をスコツプでこじあけるなどしてガラス窓二枚を損壊したものである。 三 (原審支持の第一審認定の第一事実) 被告人は…a町信号書出入口附近にいた多数の組合員と共謀の上、相共に同信号書出入口の施錠された硝子戸及びこれに隣接する硝子窓を叩いたり揺さ振つたりした揚句、組合員中の或る者はスコツプで窓枠をこじつてその窓硝子を壊し、或る者は外された窓枠を階段下地上に投げ棄て、因て窓硝子戸二枚を損壊したものである。
訴因の同一性があるとされた事例。
刑訴法312条,暴力行為等処罰ニ関スル法律1条
判旨
裁判所が訴因変更の手続を経ることなく、起訴状に記載された事実とは異なる事実を認定しても、それが被告人の防御の範囲内であれば訴訟法上の違法はない。また、暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用にあたり、確定した事実関係に基づけば同法の適用は正当である。
問題の所在(論点)
裁判所が訴因変更の手続(刑事訴訟法312条1項)を経ずに事実を認定することが許されるか、および確定した事実に対して暴力行為等処罰ニ関スル法律を適用することが正当か。特に、審判対象の画定と被告人の防御権の保障が問題となる。
規範
裁判所は、審判の対象である訴因について、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない範囲内であれば、訴因変更の手続を経ることなく事実を認定することができる。また、実体法(本件では暴力行為等処罰ニ関スル法律)の適用については、確定された事実関係が当該法律の構成要件を充足する限り、その適用は適法である。
重要事実
本件において被告人は、起訴状に記載された具体的な犯罪事実に基づき公訴を提起されたが、裁判所は訴因変更の手続を経ることなく事実を認定し、暴力行為等処罰ニ関スル法律を適用して有罪とした。被告人側は、訴因変更の手続を欠いたことが訴訟法違反であり、また事実誤認や法令適用の誤りがあるとして上告した。
事件番号: 昭和46(あ)1190 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単独正犯として起訴された事案について、訴因変更の手続を経ることなく共同正犯として認定することは、判決が訴因と異なる事実を認定したものではない場合には許容される。 第1 事案の概要:被告人は単独正犯の訴因により起訴された。原審(控訴審)は、被告人の行為について、訴因変更の手続を経ることなく事実認定を…
あてはめ
最高裁判所は、原判決が訴因変更の手続を要しないとした判断を正当として是認した。これは、認定された事実が当初の訴因の枠内にあるか、あるいは被告人の防御に具体的な支障を来さない程度のものであったことを示唆する。また、事実審が確定した事実関係に照らせば、被告人の行為に暴力行為等処罰ニ関スル法律を適用した判断にも法令違反の過誤は認められないと判断された。
結論
本件において訴因変更の手続は不要であり、暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用も正当であるため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、訴因変更の要否に関する一般的基準(防御権の行使に実質的な不利益がない場合)を前提に、具体的事例における判断を示したものとして実務上参照される。論文試験においては、訴因変更が不要となる例外的な場面(縮小認定等)のあてはめを補強する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)519 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、被告人の上告趣旨が刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で判決を取り消すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:本件において、被告人は原審の判決を不服として上告を申し立てた。判決文からは具体的な公訴事実や被告人が主張した…
事件番号: 昭和30(あ)434 / 裁判年月日: 昭和30年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述が強制や拷問によるものであるという主張について、これを認めるべき証拠がない場合には、憲法違反等の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原審における証人または被告人の供述が強制や拷問によって得られたものであると主張し、憲法違反を理由に上告を申し立てた事案である…
事件番号: 昭和43(あ)130 / 裁判年月日: 昭和44年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】常習特殊窃盗罪等の常習性認定において、判決書に常習性を認定すべき証拠を具体的に示さなかったとしても、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が常習特殊窃盗罪等の罪に問われた事案において、原判決が犯行の常習性を認定するに際し、その根拠となる証拠を判決書に具体的に示さなかった。これに対し、弁…
事件番号: 昭和41(あ)1424 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基本権を保障する憲法28条の下においても、争議行為等に伴う暴行・脅迫等の違法な行為について正当防衛(刑法36条1項)が成立するためには、急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため「やむを得ずにした行為」といえることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議の一環として行…