判旨
公職選挙法148条2項にいう文書等の「頒布」とは、不特定又は多数人への交付を指すが、現に受けた者が特定の少数人であっても、その者を通じて当然又は成行上、不特定又は多数人に配布されるべき状況下で交付すれば、その時点で頒布罪が成立する。
問題の所在(論点)
公職選挙法148条2項にいう新聞紙等の「頒布」の意義、及び、新聞販売店主という特定の少数人に対して新聞を交付した段階で「頒布」があったといえるか(頒布罪の既遂時期)。
規範
公職選挙法における文書・図画の「頒布」とは、不特定又は多数人に対して右文書図画を交付することをいう。ただし、現に交付を受けた者が特定の少数人であっても、その者を通じて当然若しくは成行上、不特定又は多数人に配布されるべき情況の下に交付したときは、その交付の時点で頒布罪が成立(既遂)するものと解する。
重要事実
被告人は、選挙運動に関連し、特定の新聞(神奈川時事新報)を多数の有権者に対して無料で新聞折込みの方法により配布することを企てた。被告人は、新聞専売所の店主ら4名に対し、一般読者へ配布(折込み)させる目的で当該新聞を交付した。
あてはめ
被告人が交付した相手方は新聞専売所の店主ら4名であり、物理的には特定の少数人に対する交付にとどまっている。しかし、被告人の目的は多数有権者への無料折込み配布にあり、新聞専売所に交付する行為は、その業務の性質上、当然又は成行上、不特定多数の読者へ配布されることが予定された状況下での行為といえる。したがって、店主らという特定の少数人に交付した段階で、不特定又は多数人に対する配布に向けた行為として「頒布」に該当すると評価される。
結論
新聞専売所の店主らに新聞を交付した時点で公職選挙法上の「頒布」があったと認められ、頒布罪が成立する。
実務上の射程
選挙運動に関する文書頒布規制(公選法142条、148条等)全般に及ぶ。末端の有権者に届く前であっても、配布を予定した中間業者や協力者への交付段階で既遂を認め得るため、予備・未遂概念のない同罪の適用範囲を画定する基準として重要である。
事件番号: 昭和35(あ)2226 / 裁判年月日: 昭和36年3月20日 / 結論: 棄却
「全国区参議院議員候補某選挙対策委員」という肩書を付した名刺は、公職選挙法第一四二条にいう「選挙運動のために使用する文書」にあたる。