判旨
労働組合によるピケッティングが、業務に従事しようとする者の自由意思を不法に抑圧し、業務を妨害する態様で行われた場合には、争議権の正当な限界を逸脱し違法となる。
問題の所在(論点)
労働組合によるピケッティングにおいて、業務に従事しようとする従業員の自由意思を抑圧して業務を妨害する行為が、刑法上の業務妨害罪(233条、234条等)との関係で正当な争議行為として違法性が阻却されるか。
規範
争議行為が憲法28条等により正当化されるためには、その態様が社会通念上相当な範囲内にあることを要する。具体的には、相手方の自由意思を不法に抑圧し、物理的強制をもって業務を妨害する行為は、争議権の正当な限界を逸脱し、刑法上の違法性を有するものと解すべきである。
重要事実
A労働組合の員らである被告人らは、ストライキの実施に際し、ピケ隊を組織して、A株式会社側の業務に従事しようとする従業員らに対し、電車の運転業務等の遂行を物理的ないし心理的に妨害した。
あてはめ
本件における被告人らおよびピケ隊員の所為は、業務に従事しようとする従業員に対し、不法にその自由意思を抑圧する態様で電車の運転業務等を妨害したものである。これは、単なる説得や平穏な訴えかけの範囲を超え、他者の意思決定および行動の自由を実力で制約するものであり、争議権の正当な限界を逸脱していると評価される。
結論
被告人らの行為は正当な争議行為とは認められず、刑法上の違法性を免れない。
実務上の射程
ピケッティングの正当性限界に関するリーディングケースの一つ。説得によるピケ(平和的説得)は許容されるが、実力行使によるピケ(実力阻止)は正当性を欠くという、いわゆる「静止的ピケ」と「動的ピケ」の区別において、後者を違法とする判断基準として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)4798 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: その他
労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するためにとられた労働者側の威力行使の手段(いわゆるピケツト、ライン)が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には、威力業務妨害罪が成立し、したがつて、これを処罰することは、憲法第二八条に違反しない