一 控訴棄却の判決をした場合には、刑訴法第四〇四条の「この法律に特定の定のある場合」に属し、刑訴法第三三五条の準用はない(昭和二五年(あ)三一七七号同二六年五月一〇日第一小法廷決定、刑集五巻六号一〇二一頁参照)。 二 控訴審は事後審であるから、刑訴法第二九三条、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用されない(昭和二五年(あ)第一四一五号同年一〇月一二日第一小法廷決定、刑集四巻一〇号二〇八七頁参照)。
一 控訴棄却の判決と刑訴法第三三五条の準用の有無。 二 刑訴法第二九三条、刑訴規則第二一一条の規定は控訴審に準用があるか。
刑訴法335条,刑訴法396条,刑訴法404条,刑訴法293条,刑訴法390条,刑訴法388条,刑訴規則211条,刑訴規則250条
判旨
控訴審は事後審としての性質を有することから、第一審における証拠調べ等の手続を前提とするものであり、刑訴法293条(論告)および刑訴規則211条の規定は控訴審には準用されない。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審の公判手続等に関する規定である刑訴法293条(検察官の意見陳述・論告)および刑訴規則211条が準用されるか。また、控訴棄却の判決において、刑訴法335条の罪となるべき事実の判示等が必要とされるか。
規範
控訴審は事後審であるため、第一審のような証拠調べ手続を当然には行わず、その結果として検察官の論告等に関する規定(刑訴法293条、刑訴規則211条)は、控訴審手続には準用されない。
重要事実
被告人が第一審の判決を不服として控訴したが棄却されたため、上告を提起した事案。上告人は、控訴審において論告等の手続が行われなかったことが訴訟法違反(刑訴法335条違反等)や憲法違反にあたると主張して、判例違反等を理由に上告した。
事件番号: 昭和29(あ)2318 / 裁判年月日: 昭和29年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張せず、原審が判断していない第一審手続の法令違反を上告理由とすることはできない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し控訴したが、控訴審において第一審手続の法令違反について主張しなかった。控訴審判決(原判決)後、被告人は第一審手続に法令違反があるとして上告を申し立てた。なお、原判決…
あてはめ
控訴審は事後審としての性質を持つ。したがって、第一審の審理を前提にその当否を判断する場であり、改めて一から証拠調べや論告を行う性質の審級ではない。ゆえに、論告等を定めた各規定は準用されず、これを行わなかった控訴審の手続に違法はない。また、控訴棄却の判決は一審判決を維持するものであるから、「この法律に特別の定のある場合(刑訴法404条)」に該当し、第一審のような詳細な事実適示(刑訴法335条)を重ねて行う必要はない。
結論
控訴審において論告等の手続は不要であり、刑訴法293条や刑訴規則211条の準用はない。上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審が事後審であるという構造的な理解を示す際に活用できる判例。公判手続の規定がどこまで控訴審に及ぶかを検討する際の基礎となるが、現代の司法試験では事後審の性格は前提とされることが多いため、手続的瑕疵の有無が争点となった際の否定根拠として用いる。
事件番号: 昭和29(あ)3283 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審において複数回の公判期日を重ね、証人尋問や被告人質問等の証拠調べを適法に実施している場合、審理不尽の違法があるとはいえず、略式手続で審判したとの非難は当たらない。 第1 事案の概要:被告人は第一審が審理を尽くさなかったと主張して上告した。記録によれば、第一審は7回にわたって公判を開き、証人2…