パチンコの景品たばこの販売を放置するときは、たばこは全くの自由商品と化するのおそれが甚大であり、延いては国がたばこの専売を独占しもつて国の財政収入を確保せんがため、所定の売捌人以外の者による販売を厳重に取締つている専売制度の趣旨を乱すに至るであろうことは火を見るよりも明らかであるから、景品たばこを販売することは右制度の趣旨に反し、たばこ専売法第二九条第二項に反する違法な行為といわなければならない。この点は当裁判所の判例(昭和三三年(あ)第一二六五号同三五年六月二三日第一小法廷判決、刑集一四巻八号一〇八〇頁・昭和三七年(あ)第四一〇号同年九月一三日第一小法廷判決、刑集一六巻九号一三二七頁参照)の趣旨として是認するところである。
たばこ専売制度の趣旨とパチンコ景品たばこの再売却行為の違法性。
たばこ専売法29条2項,たばこ専売法71条5号
判旨
パチンコの景品として一度流通したたばこであっても、所定の売捌人以外の者がこれを販売する行為は、国の財政収入確保を目的とするたばこ専売制度の趣旨を乱すおそれがあるため、たばこ専売法上の無許可販売罪を構成する。
問題の所在(論点)
一度適法に販売され、専売益金の収納が完了した「パチンコの景品たばこ」を、許可なく再販売する行為が、旧たばこ専売法(昭和24年法律第111号)29条2項にいう無許可販売罪の違法性を有するか。
規範
たばこ専売制度の趣旨は、国がたばこの専売を独占することで国の財政収入を確実に確保することにある。このため、制度の趣旨を没却し、たばこが全くの自由商品と化することを防ぐべく、所定の売捌人以外の者による販売は厳重に禁止されるべきである。したがって、一度適法に売り渡された商品であっても、その後の転売行為が専売制度の根幹を害する蓋然性がある限り、同法違反の違法性が認められる。
重要事実
被告人らは、パチンコ店において景品として客に交付されたたばこを買い取り、これを再売却(転売)した。弁護人は、当該たばこは指定小売人から正規に売り渡された時点で専売益金の収納という財政上の目的を達しており、既に単純な商品となっているため、これを販売しても国家財政に影響はなく違法性はないと主張して上告した。
あてはめ
パチンコの景品たばこの販売を放任すれば、たばこが流通経路を外れて自由な取引対象となり、国による独占的販売体制が形骸化するおそれが極めて大きい。これは国の財政収入確保を目的として売捌人を限定している専売制度の趣旨を著しく乱すものである。したがって、既に一度売買が成立した後の個体であっても、無許可で販売に付す行為は同法29条2項に反する違法な行為と評価される。
結論
パチンコの景品たばこの販売は、たばこ専売法29条2項、71条5号に該当し、当該たばこは犯罪にかかる物として没収の対象となる。被告人らの行為は有罪である。
実務上の射程
現在はたばこ専売法が廃止され「たばこ事業法」となっているが、製造・販売が免許制・登録制である点において本判決の法理(制度の趣旨から販売主体の限定を厳格に解する姿勢)は参照されうる。また、行政法規の目的(財政目的等)が達せられた後であっても、管理体制の維持を重視して形式的・実質的違法性を認める判断枠組みとして意義がある。
事件番号: 昭和37(あ)1129 / 裁判年月日: 昭和37年10月24日 / 結論: 棄却
公社または指定小売人でない者が指定小売人から売り渡された「製造たばこ」を反覆継続してする意図の下に同一のパチンコ屋に販売したときは、たばこ専売法第二九条第二項に違反することは、当裁判所の判例とするところである(昭和三〇年(あ)第一〇二五号同三二年七月九日第三小法廷決定、刑集一一巻八号二〇五五頁、昭和三三年(あ)第一二六…
事件番号: 昭和30(あ)3255 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 破棄自判
被告人が、窃盗本犯から依頼を受けて、その窃取にかかる専売公社の製造たばこであるピース九百五十箱および光五百箱を、その情を知りながら代金合計五万三千円で特定人に売却する周旋をしたとしても、被告人の所為はたばこ専売法第二九条第二項の販売をしまたはこれを幇助したものということはできない