被告人が、窃盗本犯から依頼を受けて、その窃取にかかる専売公社の製造たばこであるピース九百五十箱および光五百箱を、その情を知りながら代金合計五万三千円で特定人に売却する周旋をしたとしても、被告人の所為はたばこ専売法第二九条第二項の販売をしまたはこれを幇助したものということはできない
たばこ専売法第二九条第二項の販売にあたらない事例
たばこ専売法29条2項
判旨
たばこ専売法上の「販売」とは、不特定多数人に対してなす目的をもってなされる有償的譲渡行為を指すと解すべきである。したがって、当該目的が認められない譲渡行為を周旋したとしても、同法違反の罪は成立しない。
問題の所在(論点)
たばこ専売法29条2項にいう「販売」の意義、および特定の相手方に対する一回的な譲渡行為の周旋が同条の罪を構成するか。
規範
たばこ専売法29条2項にいう「販売」とは、単なる有償譲渡を指すのではなく、不特定かつ多数の者に対して売却する目的をもって行われる有償的譲渡行為を指すものと解される。
重要事実
被告人は、Aほか1名がBに対して本件煙草を売り渡した行為を周旋した。原審は、この行為がたばこ専売法29条2項に違反する販売行為の幇助または販売にあたるとして有罪を言い渡した。しかし、記録上、Aらの譲渡行為が不特定多数人に対してなす目的をもってなされたことを裏付ける事実は認められなかった。
あてはめ
本件において、AらがBに対して煙草を売り渡した行為は、特定の相手方に対する個別の譲渡にすぎない。判例の解釈によれば「販売」といえるためには「不特定多数人に対してなす目的」が必要であるが、本件の譲渡行為にそのような目的があったとは認められない。したがって、その譲渡を周旋した被告人の行為も、同条項の販売行為に関与したものとはいえず、罪を構成しない。
結論
被告人の本件煙草に関する周旋行為については、たばこ専売法違反の罪は成立せず、無罪(ただし、他罪と観念的競合の関係にあるため主文では言及せず)。
実務上の射程
行政法規における「販売」の概念について、単なる譲渡ではなく不特定多数を相手にするという「営業的・反復的性格」を要求した点に意義がある。司法試験においては、特別刑法や行政刑罰の解釈において、処罰範囲の限定を画する際の判断枠組みとして参考になる。
事件番号: 昭和33(あ)1265 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
公社または指定小売人でない者が、指定小売人から売り渡された「製造たばこ」を、本件のように反覆継続してする意図の下に他に販売したとき(九ケ月二一日間約四九回にわたり新生合計四六、二五九個、ピース合計八七、五八〇個、光合計一四、八八〇個を同一パチンコ屋に販売)は、たばこ専売法第二九条第二項に違反する。