判旨
公職選挙法252条が選挙犯罪者に対し一定期間の選挙権・被選挙権を停止する規定は、選挙の公正を確保するための合理的制限として憲法11条、15条、44条等に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条1項・2項が、選挙犯罪者に対して一定期間の選挙権および被選挙権を剥奪することが、憲法11条、15条3項、および44条に違反するか。特に地方選挙において法律による制限が許されるかが問題となる。
規範
選挙権・被選挙権は国民の基本的人権に属するが、無制限に保障されるものではない。選挙の公正を直接的に害する犯罪に処せられた者は、選挙に関与させるに不適当な者として、一定期間公職の選挙から排除することは、選挙の公正を確保する目的から相当な制限として許容される。また、憲法に法律への委任規定がない地方公共団体の選挙権等についても、国会議員の選挙と同様に法律による合理的な制限が可能である。
重要事実
被告人は、公職選挙法252条1項及び2項に規定される選挙犯罪(具体的な罪名は判決文からは不明)を犯し、執行猶予付きの刑に処せられた。同条の規定に基づき、被告人は執行猶予期間中、国政選挙および地方選挙における選挙権および被選挙権を停止された。これに対し、被告人は当該規定が憲法11条および15条3項に違反し、基本的人権である参政権を不当に侵害するものであるとして上告した。
あてはめ
本件における制限の対象は、選挙の公正を害する犯罪を犯した者である。このような者は現に選挙の公正を侵害した事実があり、選挙に関与させることは制度の適正な運用を妨げる恐れがある。したがって、一定期間の排除は「相当」な範囲内といえる。また、憲法44条が国会議員の資格を法律に委任していることは、法律で定める必要性を明示したに過ぎず、地方公共団体の選挙についても、同様の趣旨から法律による制限が当然に認められるべきである。したがって、本件規定は合憲的な制限である。
結論
公職選挙法252条1項、2項の規定は憲法に違反しないため、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
参政権の制限に関する初期の判例であり、選挙犯罪を理由とする制限を「相当」として広く認めている。現在の司法試験答案においては、本判例を前提としつつ、近時の「在外邦人選挙権制限違憲訴訟」等の判断枠組み(やむを得ない事情の有無)を意識して論じる際のリファレンスとして活用すべきである。
事件番号: 昭和38(あ)1962 / 裁判年月日: 昭和39年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条による選挙権・被選挙権の停止は、刑罰ではなく処刑に伴う法律上当然の効果であり、憲法14条、15条、31条、44条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは公職選挙法違反の罪に問われ、有罪判決を受けた。これに伴い、同法252条に基づき選挙権および被選挙権が停止されることとなった…