判旨
公職選挙法252条所定の選挙犯罪を犯した者に対し、選挙権および被選挙権を停止することは、選挙の公正を確保する目的から合理的であり、憲法14条、15条、44条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法252条1項による選挙犯罪加担者への選挙権・被選挙権の停止規定は、特定の犯罪を犯したことを理由に参政権を制限する点において、憲法14条、15条、44条に違反するか。また、個別具体的な事案において「選挙の公正を阻害するおそれがない」とされる場合にまで同条を適用することは許されるか。
規範
公職選挙法252条所定の選挙犯罪は、いずれも選挙の公正を害する犯罪であり、これらの罪により刑に処せられた者は、現に選挙の公正を害したものとして、選挙に関与させるのに不適当な者と認められる。したがって、同条に基づく選挙権・被選挙権の停止規定は、憲法14条(法の下の平等)、15条(公務員選定罷免権)、44条(投票資格の平等)に違反するものではない。
重要事実
被告人Bは、公職選挙法所定の選挙犯罪の一つである買収罪を犯した。第一審判決は、同法252条1項に基づき選挙権および被選挙権を停止したが、同条3項の規定を適用してその停止期間を1年に短縮した。被告人側は、本件は選挙の公正を阻害するおそれのない特殊な場合であり、停止規定を適用しない旨を宣告しなかった原判決は違憲であると主張して上告した。
あてはめ
公職選挙法252条に掲げられた各罪は、その性質上、選挙の公正を害するものである。買収罪を犯した被告人Bは、現に選挙の公正を害した者として、選挙に関与させるに適しない者に該当する。被告人側は「公正を阻害しない特殊な場合」であることを前提とするが、当該犯罪を犯したこと自体が選挙への関与を不適当とする根拠となるため、その前提は採用し得ない。したがって、裁判所が同条3項に基づき停止期間を短縮したにとどめ、停止規定そのものを不適用としなかった判断は適法である。
結論
公職選挙法252条の規定は合憲である。買収罪を犯した被告人に対し、同法252条3項により停止期間を短縮した上で選挙権等を停止した原判決に憲法違反の点はない。
実務上の射程
選挙権の制限が認められる「やむを得ない事由」(最大判平17.9.14参照)の先駆的判断として位置付けられる。選挙の公正確保という公益目的による参政権制限の合憲性を肯定する際の基礎的な規範として引用できる。答案上は、制限の目的の正当性と手段の合理性を論じる際の判例の態度として示すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4618 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法252条が定める、選挙犯罪による被選挙権等の制限は、憲法14条の法の下の平等および44条の選挙権等の資格に関する規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は公職選挙法違反の罪に問われ、同法252条の規定に基づき、一定期間の被選挙権および選挙権の停止を伴う有罪判決を受けた。これに対し、被…