所論は、本件における示威行進等の許可は、三重県公安委員会運営規程(昭和二九年同県公安委員会規則第一号)第七条に基づく三重県警察本部長専行規程(昭和二九年県公安委員会規程第二号)第三条により、同警察本部長が専行したものであるが、右委任の規程はその運営面から考えると、事実上同警察本部長に、その許可を全部握らしていることになり、憲法第二一条に違反し、許可は無効であると主張する。しかし、所論専行規程は、緊急やむをえないと認められる場合または相当期間公安委員会が開かれない場合における緊急措置として、警察本部長が公安委員会の権限に属する事務を専行することを認めたものであり、しかもこの場合にはすみやかに公安委員会の承認を受けなければならないことを定めているのであつて、所論の如くその許可を全部警察本部長に握らしているものとは認められない。右専行規程に関する所論は独自の見解であつて是認できず、違憲の主張はその前提を欠き、許可の無効を主張する所論は採用できない。
三重県公安委員会運営規程(昭和二九年同県公安委員会規則第一号)第七条に基づき三重県警察本部長専行規程(昭和二九年県公安委員会規程第二号)第三条により同警察本部長が専行した示威行進等の許可は憲法第二一条に違反し無効であるか。
憲法21条,三重県公安委員会運営規程(昭和29年三重県公安委員会規則1号)7条,三重県警察本部長専行規程(昭和29年三重県公安委員会規程2号)2条,三重県警察本部長専行規程(昭和29年三重県公安委員会規程2号)3条,示威行進及び集団示威運動に関する条例(昭和24年三重県条例24号)2条,示威行進及び集団示威運動に関する条例施行規程(昭和24年三重県公安委員会告示4号)2条,示威行進及び集団示威運動に関する条例施行規程(昭和24年三重県公安委員会告示4号)5条
判旨
公安委員会の権限を警察本部長に専行させる規定や、公衆の危害予防を目的とした包括的な条件付与の規定は、事後の承認手続や具体的条件の提示を伴う限り、憲法21条及び31条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公安委員会の許可権限を警察本部長に専行させる規程は、表現の自由(憲法21条)に違反し無効か。 2. 「公衆に対する危害を予防するために必要な事項」という抽象的な根拠規定に基づく条件違反を処罰することは、適正手続(憲法31条)に違反するか。
規範
1. 公安委員会の事務専行規程が、緊急時等の例外的な措置に限定され、かつ事後に公安委員会の承認を要する仕組みであるならば、実質的な権限移譲とはいえず合憲である。 2. 許可に際して付される条件の根拠規定が包括的であっても、それに基づき具体的な条件が特定され、その具体的条件への違反が処罰の対象となるのであれば、罪刑法定主義(憲法31条)に違反しない。
重要事実
被告人らは三重県内で示威行進(デモ)を行ったが、警察本部長が公安委員会の権限を専行して許可を与え、かつ「公衆に対する危害を予防するために必要な事項」という包括的な施行規程に基づき条件を付した。被告人側は、警察本部長への専行は憲法21条に、包括的な条件付与による刑罰対象の確定は憲法31条に違反し、これらを前提とした巡査の写真撮影行為は適法な公務執行ではないと主張した。
あてはめ
1. 本件専行規程は、緊急やむを得ない場合等に限定された緊急措置であり、かつ事後に速やかに公安委員会の承認を受けるべきことが定められている。したがって、警察本部長が独断で許可権を掌握するものとはいえず、合憲である。 2. 施行規程は条件の範囲を定めているに過ぎず、実際に罰則の対象となるのはこれに基づいて具体化された条件への違反行為である。したがって、抽象的な規定を根拠としていても、処罰対象が漠然としているとはいえない。
結論
本件の許可および条件は有効であり、それを前提とした巡査の公務執行(写真撮影)を妨害する行為に違法性阻却事由は認められない。上告棄却。
実務上の射程
公安条例事件における行政権限の委任の限界と、授権規定の明確性の原則に関する判断基準を示す。特に、手続的な事後承認の存在や、具体的処分による要件の具体化が合憲性判断の鍵となることを示唆している。公務執行妨害罪の成否における「公務の適法性」の前提となる行政処分の効力を争う際の重要判例である。
事件番号: 昭和40(あ)1187 / 裁判年月日: 昭和44年12月24日 / 結論: 棄却
一 昭和二九年京都市条例第一〇号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない。 二 何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない。 三 警察官による個人の容ぼう等の写真撮…