一 単に法律見解を示しただけで構成要件に該当する罪となるべき事実を認定判示していない場合は、犯罪構成要件に該当する事実は証拠によつて認定することを要するとした高等裁判所の判例および不可分の供述の一部を分離してその供述全体の趣旨と異る意味において事実認定の資料に供することは違法であるとした当裁判所の判例と相反する判断をしたことにならない。 二 本件労働者の行動は、所論のように請願権の行使として参議院に赴いた多数の労働者が参議院構内に立入ることを拒否されたため、参議院前の道路上にたまたま集合していたに止まるものとは認められず、また国会に対する陳情行為のため紹介議員に対して団体交渉をする目的で集合していたに止まるものとは認められない。されば、原審が、本件労働者の行動が、昭和二五年七月三日東京都条例第四四号に違反し公安委員会の許可を受けずに行われた不適法なもので、道路交通取締法等の規定による交通取締の対象となるものであつたとした判断はこれを背認することができる。
一 判例と相反する判断をしたことにならない一事例 二 昭和二五年東京都条例第四四号に違反する集団示威運動と認められる一事例 −国会に対する請願および陳情と認められない場合−
刑訴法405条2号,刑訴法405条3号,刑訴法335条1項,昭和25年7月3日東京都条例44号,憲法16条
判旨
無許可で行われた集団示威運動が、道路交通取締法等の規定による交通取締の対象となる不適法なものである場合、当該運動に伴う公務員の職務執行は適法であり、これに抵抗する行為は公務執行妨害罪を構成する。
問題の所在(論点)
無許可で行われた集団示威運動が、道路交通取締法等に基づく適法な交通取締の対象となるか。また、その際の公務員の職務執行に対して抵抗した場合、公務執行妨害罪が成立するか。
規範
集団示威運動が条例に基づく公安委員会の許可を受けずに行われ、かつ道路交通取締法等の規定に違反する不適法な態様を呈している場合には、警察官等による交通取締の対象となる。このような不適法な集団行動を制止する公務員の職務執行は、適法なものとして保護される。
重要事実
多数の労働者が、請願権行使や陳情を目的として参議院構内への立ち入りを求めたが拒否され、参議院前の道路上に集合した。この行動は、昭和25年東京都条例第44号(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)に基づく公安委員会の許可を受けずに行われたものであった。被告人らは、この状況下で公務員の職務執行を妨害したとして、公務執行妨害罪に問われた。
あてはめ
本件労働者の行動は、単に参議院前にたまたま集合していたり、紹介議員に対して団体交渉を行ったりする範囲に留まるものではない。公安委員会の許可を得ずに行われた集団示威運動であり、道路上の交通秩序を乱す不適法なものであった。したがって、道路交通取締法等に基づき警察官等が交通取締を行うことは正当な職務執行といえる。原審がこれを不適法な運動と認定したことは、公務執行妨害罪の構成要件該当性を判断する前提としての法律見解であり、正当である。
結論
無許可の集団示威運動は不適法であり、これに対する交通取締は適法な職務執行にあたるため、公務執行妨害罪の成立を認めた原判決は妥当である。
実務上の射程
集団示威運動と公務執行妨害罪の関係において、条例違反(無許可)の事実が職務の適法性判断に直結することを示している。答案上は、職務執行の適法性を検討する際、根拠法令(道路交通法等)と合わせて、現行の地方自治体による公安条例の遵守状況を考慮する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)287 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: 棄却
昭和二五年京都市条例第六二号、集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は憲法第二一条に違反しない。