判旨
控訴審判決が、第一審判決の事実誤認はないとして控訴を排斥しながら改めて同一趣旨の事実認定をし直すことは判例違反であるが、その違反が判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、破棄理由にはならない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審の事実認定を是認して控訴を排斥しながら、改めて同一趣旨の事実を認定し直す措置の適否、および、それが判決に影響を及ぼさない場合の破棄理由の存否(刑事訴訟法410条1項但書)。
規範
控訴審において、第一審判決に事実誤認がないとして控訴を排斥する場合、重ねて同一の事実認定を行うことは訴訟手続上の瑕疵となり、判例(昭和34年2月26日決定)に違反する。しかし、刑事訴訟法410条1項但書に基づき、当該判例違反が判決に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、原判決を破棄すべき理由とはならない。
重要事実
被告人Aに対し、第一審判決が下された。控訴審(原判決)は、第一審判決の事実認定に誤りはないとして被告人の控訴を排斥した。しかし、原判決はその際、第一審の認定を維持するだけでなく、改めて第一審と同一趣旨の事実認定を判決書に記載し直すという措置を講じた。弁護人は、この措置が最高裁の判例に違反するとして、上告を申し立てた。
あてはめ
原判決が、第一審判決に事実誤認がないと判断して控訴を排斥しながら改めて同一の事実を認定した点は、既存の最高裁判例(昭和34年2月26日第一小法廷決定)に抵触する手続上の誤りであるといえる。しかし、本件において認定された事実の内容そのものは第一審と同一であり、その結論に差異は生じていない。したがって、形式的な認定の重複という判例違反は存在するものの、実質的に判断の結論を左右するものではなく、判決に影響を及ぼさないことが明らかであると解される。
結論
本件各上告を棄却する。原判決の手続には判例違反が認められるが、判決に影響を及ぼさないことが明らかなため、破棄すべき理由には当たらない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反」の判断枠組みを示す事例。答案上は、控訴審の判決構成に瑕疵がある場合であっても、結論に影響がない形式的な誤りであれば破棄理由とならないことを説明する際に、刑訴法410条1項但書の適用例として活用できる。
事件番号: 昭和40(あ)2241 / 裁判年月日: 昭和41年4月14日 / 結論: 棄却
公務執行妨害罪における職務としての現行犯人逮捕行為の適法性の判断は、逮捕行為当時における具体的状況を客観的に観察して、現行犯人と認められるに十分な理由があつたか否かによるべきものであつて、事後において犯人と認められたか否かによるべきものではない。
事件番号: 昭和36(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
弁護人の上告趣意第一点につき記録を調べて見ると原審弁護人は控訴趣意第一点において被告人のAに対する所為は心神耗弱に出たものであることを主張したにかかわらず原判決がこれに対し何等判断を示さなかつたことは違法たるを免れない。しかし、被害者Aに対する供述調書によれば、かかる主張事実を認められないから、右の違法は、原判決を破棄…