判旨
憲法36条の「残虐な刑罰」とは、刑罰そのものが不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷なものを指し、法定刑の選択や量定の不当を含まない。また、憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗のない組織・構成の裁判所を意味し、被告人間での刑の不均衡はこれに直ちに反しない。
問題の所在(論点)
量刑の不当や相被告人間での刑の不均衡が、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」や憲法37条1項が保障する「公平な裁判所による裁判を受ける権利」に抵触するか。
規範
1. 憲法36条の「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質そのものが、不必要な精神的・肉体的苦痛を伴い、人道上残酷と認められるものを指す。単なる法定刑の範囲の選択や量刑の不当はこれに当たらない。 2. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、主観的・客観的に偏りのない、不公平でない組織および構成を有する裁判所による裁判を意味する。
重要事実
被告人AおよびBは、関税法違反等の罪に問われた。被告人らは、第一審および控訴審の量刑が過重であること、また共犯者(相被告人)らとの刑の均衡を著しく欠くことなどを理由に、これが憲法36条の「残虐な刑罰」や憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」に違反するとして上告した。
あてはめ
1. 憲法36条違反について、本件で適用された刑罰の内容は、処断刑の範囲内での量刑にすぎず、刑罰そのものが人道上残酷な苦痛を強いるものとは認められない。 2. 憲法37条1項違反について、裁判所の組織・構成に不公平な点は認められない。被告人が主観的に量刑が不当である、あるいは他の被告人と比べて均衡を欠くと主張することは、裁判所の組織的な公平性を否定する根拠にはならない。
結論
憲法36条および37条1項には違反しない。単なる量刑不当や刑の不均衡の主張は、適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
量刑判断の是非は憲法問題ではなく、通常の刑罰制度内での裁量の問題として処理される。また、迅速な裁判(37条1項)の遅延が直ちに判決に影響しないとする法理も確認されており、実務上は憲法違反を安易に認めない枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和37(あ)1240 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
関税法第一一〇条第二項の定める刑は、その所定刑期又は罰金額の範囲内で未遂の事情を参酌して、未遂減軽の規定が存する場合と実質的に同一の刑を量定する余地が十分あるのであつて、このような法定刑の定め方を以て一般刑法に比し不合理として憲法第三一条に違反するということはできない。このことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇三…