判旨
控訴審において被告人への召喚手続に瑕疵があったとしても、弁護人が公判に出廷し防御の機会が確保されている限り、その瑕疵は判決に影響を及ぼすべきものとは認められない。また、不作為による継続犯である外国人登録申請義務違反の公訴時効は、義務の履行により不法状態が解消した時から進行する。
問題の所在(論点)
1.控訴審において被告人への召喚手続に不備があった場合、判決に影響を及ぼすべき違法(刑訴法379条)となるか。2.外国人登録申請義務違反のような不作為による継続犯の公訴時効はいつから進行するか。
規範
控訴審における公判手続の瑕疵が、刑事訴訟法379条の「判決に影響を及ぼすべきこと」に該当するか否かは、被告人の出頭の要否や弁護人による防御の機会が実質的に保障されていたかによって判断される。また、継続的な義務違反に係る公訴時効の起算点は、当該義務の履行等により義務不履行の不法状態が消滅した時である。
重要事実
被告人に対し、控訴審の第1回公判召喚状は適法に送達されたが、第2回公判の召喚状は届出以外の旧住居宛に送達され、第3回(宣告)期日は送達の形跡がなかった。被告人は第1回から第3回まで欠席したが、弁護人は全期日に出廷した。また、被告人は外国人登録法に基づく登録申請義務を怠ったとして起訴されたが、申請期間経過から相当期間が経過していたため公訴時効が問題となった。
あてはめ
1.控訴審は原則として被告人の出頭を要しない(刑訴法390条)。本件では、被告人自身は召喚の不備により欠席したが、弁護人は全ての期日に出廷しており、弁論等の防御活動が遂行されている。したがって、召喚手続の瑕疵は判決に影響を及ぼさない。2.外国人登録申請義務は、在留する限り継続する不作為義務であり、所定期間の経過により消滅しない。よって、公訴時効は期間経過時ではなく、義務履行により義務が消滅した時から進行すると解するのが相当である。
結論
控訴審の召喚手続の瑕疵は判決に影響を及ぼす違法とはいえず、また、本件不申請罪の公訴時効は完成していない。上告棄却。
実務上の射程
控訴審の特質(事後審、原則として被告人の出頭不要)を前提に、召喚手続の瑕疵があっても弁護人が出頭していれば「判決に影響を及ぼすべき違法」には当たらないとする。時効については、不作為による継続犯の処理における確立した判断枠組みとして引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3895 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 破棄差戻
外国人登録令附則第二項所定の三〇日以内に登録申請をしなかつた罪の公訴時効は、その後当該外国人が本邦に在留するかぎり、その登録義務を履行した時から進行する。