原判決が、旧物品税法(昭和一五年法律第四〇号―昭和三四年四月二一日法律第一五〇号による改正前のもの)第一五条の定める製造者の申告は、物品税の徴収を確保するため、製造者および製造場の所在を明らかにすると共に、収税官吏が同法所定の質問、検査又は監督を行う必要上これをなさしめるものであるから、その申告は、同条所定の物品の製造場毎になすべきものと解すべきであるとして、製造場の移転に際し、移転先の製造場について同条所定の申告をしなかつた事件につき、不申告製造の罪の成立を認めたことは正当である。
旧物品税法第一五条に定める製造者の申告について、同条所定の物品の製造場毎になすべき申告義務の有無と不申告製造罪の成否。
旧物品税法(昭和15年法律40号―昭和34年法律150号による改正前のもの)15条,旧物品税法(昭和15年法律40号―昭和34年法律150号による改正前のもの)18条1項,旧物品税法施行規則(昭和15年勅令150号―昭和34年政令144号による改正前のもの)4条1項
判旨
旧物品税法15条に基づく製造の申告は、物品税の徴収確保や収税官吏による質問・検査等の監督を可能にするためのものであるから、製造場ごとにすべき義務を負う。したがって、製造場を移転した際に移転先について申告を欠いた場合には、不申告製造の罪が成立する。
問題の所在(論点)
旧物品税法15条が定める製造者の申告義務は、製造場を移転した場合に新たな製造場ごとになされる必要があるか。製造場単位での申告義務の有無が問題となる。
規範
物品税法上の製造申告義務は、物品税の適正な徴収を確保するため、製造者および製造場の所在を明確に特定し、当局による法所定の質問、検査または監督を可能にする趣旨で課されるものである。したがって、当該申告は単なる製造行為の届出にとどまらず、物品の製造場ごとに個別になされるべきものと解する。
重要事実
被告人は、旧物品税法(昭和15年法律第40号)15条に基づき物品の製造を行う者であったが、製造場を移転した際、移転先の製造場について同条所定の申告を行わなかった。この行為が不申告製造の罪にあたるとして起訴されたところ、被告人側は、申告義務は物品一個ずつの製造ごとに生じるものではないとする過去の判例を引用し、本件における不申告の成立を争った。
あてはめ
旧物品税法15条の趣旨は、製造場を把握することで収税官吏の監督権限を実効化することにある。本件において、被告人は製造場を移転したが、移転先についての申告を怠っている。製造場ごとに申告がなされなければ、当局は新たな製造場所を特定できず、質問や検査といった監督業務に支障をきたすため、移転先での申告は法的に必須である。引用された「一個の製造ごとに申告を要しない」とする判例は、製造行為の反復に関するものであり、製造場所の特定を目的とする本件の義務の性質とは異なる。
結論
製造場の移転に際し、移転先の製造場について申告をなすべき義務がある。これを怠った本件について、不申告製造の罪の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
行政法規上の届出義務の単位が、その制度趣旨(本件では徴収確保と監督の必要性)からどのように画定されるかを示す事例である。租税刑法における申告義務の場所的単位を確定させる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)2316 / 裁判年月日: 昭和35年4月12日 / 結論: 棄却
政府に申告せずして、物品税法所定の課税物品たる写真機を自ら製造しかつ各別の相手方に委託して製造したときは、各製造行為毎に同法第一八条第一項第一号の不申告製造罪が成立する。