国税滞納処分としての山林の差押は登記を嘱託してするものであることは所論のとおりであれけれども、その差押前に収税官吏が滞納者に対して任意に、差押物件所在の場所に赴きその物件の指示を求める等任意協力を求めることもまた収税官吏として職務上許された行為と目すべきであること原判示のとおりであるから、本件収税官吏の公務執行行為を以つて所論のように違法の行為とすることはできない。
収税官吏の公務執行行為にあたるとした事例。
刑法95条1項
判旨
国税滞納処分としての差押えに際し、収税官吏が滞納者に対し任意弁済や物件の指示などの任意協力を求める行為は、職務上の適法な行為に含まれる。
問題の所在(論点)
国税滞納処分としての山林差押え(登記嘱託によるもの)に先立ち、収税官吏が滞納者に任意協力を求める行為は、公務執行妨害罪の客体となる「職務」として適法か。また、後の査定訂正が公務の適法性に影響するか。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)における公務の適法性は、客観的職務権限に属し、かつ執行の具体的要件を備えるとともに、有効な手続を履践していることにより判断される。強制力を伴う処分の準備段階として、相手方に対し任意に協力(弁済や物件の指示等)を求める行為は、当該処分を行う権限に付随する職務上の許容された行為として適法と解される。
重要事実
収税官吏が、国税滞納処分として山林の差押えを行うため、滞納者方へ赴き、任意弁済を求めるとともに、任意に差押物件の所在場所へ赴き、その物件の指示を求める等の協力を求めた。これに対し、滞納者側は差押手続の違法性等を主張して抵抗したため、公務執行妨害罪の成否が問題となった。なお、後に当該山林所得額が職権で査定訂正されていた事実があった。
あてはめ
国税滞納処分としての差押えは登記嘱託により行われるものであるが、その前段階として収税官吏が任意弁済を求めたり、物件所在地の指示を求めたりすることは、円滑な滞納処分の執行に資する付随的業務である。したがって、これらの行為は収税官吏として職務上許された範囲内の行為といえる。また、差押え後に所得額が更正・訂正されたとしても、更正決定に基づき行われた当時の公務執行行為の適法性が遡及的に否定されるものではない。
結論
収税官吏の行為は職務上許された適法な公務執行にあたり、これに抵抗する行為は公務執行妨害罪を構成する。
実務上の射程
強制処分の着手前の「任意協力の要請」であっても、それが当該職務権限に付随し、職務上許容される範囲内であれば適法な公務として保護される。また、処分の基礎となった行政決定(更正決定等)に後に内容的な変更が生じても、執行当時の適法性は揺るがないという判断基準を示している。
事件番号: 昭和42(あ)858 / 裁判年月日: 昭和43年3月26日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和25(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
一 所得税に関する調査等をする職務を有する収税官吏が、所得税法第六三条により帳簿書類等の検査をするにあたつて、法定の検査章を携帯していなかつたとしても、納税義務者等において右検査章の不携帯を理由として右収税官吏の検査を拒んだような事実のない以上、これに対して暴行又は脅迫を加えたときは公務執行妨害罪を構成する。 二 収税…