判旨
学問の自由であっても公共の福祉による内在的制限を受け、犯罪捜査に必要な捜索・差押えを免れる絶対的な特権ではないが、捜査機関はその執行に際し、学問の自由を阻害しないよう十分な考慮を払うべきである。
問題の所在(論点)
学問的研究機関に対する捜索・差押えが、憲法23条の保障する学問の自由を侵害し、違憲となるか。また、刑事訴訟法上の捜索・差押えの要件において、学問の自由はどのように考慮されるべきか。
規範
学問の自由(憲法23条)といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による内在的制限を受ける。したがって、正当な犯罪捜査の必要性がある場合には、適正な手続(憲法35条)に基づく捜索・差押えの対象となり得る。ただし、その実施にあたっては、学問的研究機関の公正かつ自由な活動を阻害しないよう、必要最小限度にとどめるなどの特段の配慮が必要とされる。
重要事実
教育研究所(A)に対し、警察が犯罪捜査を目的として捜索・差押えの令状を執行しようとした。これに対し、研究所側は、当該機関が学問的研究機関であること、および当該執行が学問の自由を侵害し、明白かつ差し迫った必要性がないことを理由に、令状の裁判および執行の不当を訴えて特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件研究所が憲法的保障を受ける学問的研究機関であると仮定しても、学問の自由には公共の福祉による内在的制限がある。本件では、犯罪捜査の必要性に基づき令状が発せられており、その執行が直ちに学問の自由を一般的に制限することを意味しない。原審が「捜索差押も、学問的研究機関の公正自由な学究を阻害しないよう十分の考慮を払うべき」と説示している通り、適正な配慮が前提とされている以上、憲法違反には当たらない。
結論
本件捜索・差押えの裁判および執行は、学問の自由を侵害するものとはいえず、合憲である。特別抗告は棄却される。
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…
実務上の射程
学問の自由と強制捜査の調整を示したリーディングケースである。答案上は、憲法23条の制限を論じる際の「内在的制約」の根拠として利用するほか、令状執行の適法性が争われる事案において、対象が研究機関である場合の「捜査比例の原則」の具体化(十分な考慮)として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和33(し)79 / 裁判年月日: 昭和33年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の事由の有無に関する原審の事実認定を争うことは、適法な特別抗告理由とならない。 第1 事案の概要:刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由が認められないとした原審の決定に対し、特別抗告人が各高等裁判所の判例を引用して不服を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):勾留の事由(刑訴法60条1…
事件番号: 昭和30(し)22 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審判請求棄却決定に対しては、刑事訴訟法421条により常に高等裁判所への通常抗告が可能であるため、これを行わずになされた最高裁判所への特別抗告は、刑事訴訟法433条の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:公務員職権濫用被疑事件についてなされた審判請求に対し、富山地方裁判所が審判請求棄却決定を下…
事件番号: 昭和63(し)116 / 裁判年月日: 平成元年1月30日 / 結論: 棄却
報道機関の取材ビデオテープに対する捜査機関の本件差押処分は、右テープが重大な被疑事件の解明にほとんど不可欠であり、報道機関による右テープの放映自体には支障をきたさないなどの具体的事情の下においては、憲法二一条に違反しない。
事件番号: 昭和33(し)65 / 裁判年月日: 昭和33年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状に基づき拘束されていた被疑者が既に釈放され、当該勾留状が失効した場合には、もはやその効力を争う訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:被疑者等は、昭和33年8月26日に福岡地方裁判所が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、同年9月2日に被疑者等は釈放され、当該勾留状は同日をもって失効…