判旨
必要的弁護事件において、裁判所が控訴趣意書提出期限経過後に国選弁護人を選任したとしても、弁護人が被告人作成の控訴趣意書に基づき異議なく弁論を尽くす等の事情があれば、憲法37条3項に違反せず、原判決の破棄も要しない。
問題の所在(論点)
裁判所が控訴趣意書の提出期限経過後に国選弁護人を選任し、弁護人が控訴趣意書を提出する機会を得られなかった場合、憲法37条3項の弁護人依頼権に違反するか、また刑訴法411条による破棄事由となるか。
規範
必要的弁護事件(刑訴法289条1項)において、裁判所が弁護人選任に関する通知に対し所定の期限までに回答がない場合に直ちに弁護人を選任しなかった(刑訴規則250条、178条1項・3項違反)としても、弁護人が公判期日に出頭し、特段の異議なく弁論を行い、実質的な守護が尽くされていると認められる場合には、憲法37条3項違反とはならず、また原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
重要事実
窃盗・住居侵入の被告事件において、原審は控訴趣意書の提出期限を昭和32年12月17日と指定した。被告人は回答期限までに国選弁護人の選任請求をせず、提出期限当日に自ら作成した控訴趣意書を提出し、翌日に国選弁護選任請求を提出した。原審裁判長は提出期限経過後の翌年1月7日に弁護人を選任した。選任された弁護人は、指定替え等の申出をすることなく第1回公判に出頭し、被告人作成の趣意書に基づき異議なく弁論を行い、結審した。
あてはめ
本件では、国選弁護人の選任が期限から1ヶ月余り遅れ、弁護人が自ら控訴趣意書を作成する機会を逸した点は法令違反の余地がある。しかし、選任から第1回公判まで半月程度の猶予があり、弁護人は期限の指定替え等を申し立てていない。さらに、公判では弁護人が被告人作成の趣意書を前提に異議なく弁論を遂行している。こうした事情に鑑みれば、弁護人による実質的な援助は確保されており、被告人の防御権が侵害されたとはいえない。したがって、憲法違反は認められず、原判決を維持しても著しく正義に反するとは評価されない。
結論
原審の措置は憲法37条3項に違反せず、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
事件番号: 昭和29(あ)792 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
論旨は、原審において国選弁護人は十分に弁護権を行使しなかつたと非難するが、弁護人は国選私選を問わず、控訴理由を見出し得ない場合でも強いてその理由を主張しなければならぬ義務を負うものではない。
実務上の射程
必要的弁護事件における選任遅滞の瑕疵が、弁護人の追認的活動によって治癒されるか、あるいは「著しく正義に反する」といえるほどの重大な違法に至らないとする判断枠組みとして、控訴審手続の運用の限界を示すものである。
事件番号: 昭和34(あ)48 / 裁判年月日: 昭和34年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件において、国選弁護人の選任が控訴趣意書の提出期限後となったとしても、弁護人が期限の延長を求めず公判で弁論を行い、被告人の権利行使が実質的に妨げられていないのであれば、直ちに憲法及び刑訴法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は必要的弁護事件で起訴され、控訴審において原裁判所からの弁…