原判決が本件各起訴状に記載されていない犯行の動機をも認定していること所論のとおりであるが、これをもつて原判決が審判の請求を受けない事実を審判した違法があるということはできない
起訴状に記載のない犯行の動機を認定することの当否
刑訴法256条,刑訴法335条1項,刑訴法387条3号
判旨
起訴状に記載されていない事実であっても、犯行の動機であれば、裁判所がこれを認定することは審判の請求を受けない事実を審判した違法(不告不理の原則違反)には当たらない。
問題の所在(論点)
起訴状の公訴事実に記載されていない「犯行の動機」を裁判所が認定することは、刑事訴訟法上の不告不理の原則に反し、審判の請求を受けない事実を審理・判断した違法(刑訴法378条3号参照)となるか。
規範
裁判所の審判対象は起訴状に記載された公訴事実である。しかし、公訴事実そのものには当たらない事情であっても、犯行の動機などの背景事情は、公訴事実の存否や情状の判断に資するものであるから、これらを判決で認定することは審判の請求の範囲外を審判したことにはならない。
重要事実
被告人両名は刑事事件として起訴されたが、原判決において、本件各起訴状に記載されていない「犯行の動機」が事実として認定された。弁護人は、起訴状にない事実を認定したことは審理の範囲を超えた違法であると主張して上告した。
あてはめ
裁判所が起訴状に記載のない事実を認定したことは認められるが、その内容は犯行の「動機」に留まっている。動機は公訴事実を構成する具体的犯罪事実そのものではなく、犯罪の主観的側面や経緯を説明する要素に過ぎない。したがって、これを確認することは審判対象の確定を乱すものではなく、審判の請求を受けない事実を審理したものとはいえない。
結論
起訴状に記載されていない犯行の動機を認定しても、審判の請求を受けない事実を審判した違法があるということはできず、適法である。
実務上の射程
訴因の変更(刑訴法312条1項)を要するか否かの判断において、訴因に含まれない「動機」や「情状」等の付随的事実の認定については、裁判所の自由な判断に委ねられており、不告不理の原則には反しないという実務上の準則を補強するものである。
事件番号: 昭和23(れ)1883 / 裁判年月日: 昭和24年5月10日 / 結論: 棄却
一 原審が「死なうと生きようと何うなつても構わねという気持になつた」旨の供述のみを證據にとり「當時の氣持は今考えて見て良く判りません」との供述を無視したことに、採證の原則に反する違法がある、と非難するのであるがこの二つの供述は別々の機會にされたのであつて被告人の犯罪事實を認める供述と否認する供述とがある場合その何れを採…
事件番号: 昭和23(れ)2030 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
殺人被告事件において、被告人が過失による傷害である旨の主張は、旧刑訴法第三六〇条第二項の主張にはあたらない。