刑法第一七七条にいわゆる暴行脅迫は、その相手方の年令、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴つて、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである
刑法第一七七条の暴行又は脅迫の程度
刑法177条
判旨
強姦罪(現:不同意性交等罪)の暴行・脅迫は、行為単体では基準に達しなくとも、被害者の属性や周囲の環境等の具体的状況と相まって、抗拒を著しく困難にする程度であれば足りる。
問題の所在(論点)
旧刑法177条(強姦罪)における「暴行又は脅迫」の程度について、暴行・脅迫の行為そのものが極めて強力である必要があるか。具体的事情を考慮してその程度を判断すべきかが問題となる。
規範
暴行または脅迫の行為は、単にそれのみを抽出して観察すれば「抗拒を著しく困難ならしめる程度」に達しないと認められるものであっても、相手方の年齢、性別、素行、経歴等や、行為がなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情と相まって、相手方の抗拒を不能にし、またはこれを著しく困難ならしめるものであれば足りる。
重要事実
被告人ら3名は、午後8時頃から翌午前2時頃にわたり、善良純真な少女である被害者に対し、深夜で人気のない校庭や公園等の環境において身辺につきまとった。帰宅を妨げるため逮捕監禁に等しい暴行を加えつつ、集団的威力により生命・身体に危害を加える可能性を暗示する脅迫的態度を示し、恐怖により抗拒不能に陥った被害者を姦淫した。
あてはめ
本件では、行為自体の物理的強弱のみならず、深夜の校庭という「四囲の環境」、少女という「被害者の属性」、3名という「集団的威力」といった具体的事情が認められる。これらが相俟って、被害者を心理的・物理的に追い詰め、抗拒不能の状態に陥らせたと評価できる。したがって、一連の言動は強姦罪にいう暴行・脅迫に該当する。
結論
被告人らの行為は強姦罪の構成要件である暴行・脅迫に該当し、同罪が成立する。
実務上の射程
暴行・脅迫の「著しく困難」性の判断において、物理的な力だけでなく、場所的・時間的状況や被害者の主観的・属性的事情を総合考慮することを認めた重要な判例。改正法下の「不同意性交等罪」における「拒絶困難」な状態の認定においても、同様の相関的・総合的判断が妥当すると考えられ、実務上の指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)2531 / 裁判年月日: 昭和27年3月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗罪の暴行・脅迫は、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要し、その判断は日時、場所、手段方法等の諸般の事情を総合して行うべきである。また、最初の脅迫によって生じた畏怖状態が継続している間に財物を奪取した場合、強盗罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、夜間、路上…
事件番号: 昭和29(あ)146 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦罪(現行法の強制性交等罪)の成立には、被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度の暴行または脅迫が必要であり、脅迫によって畏怖させた上で姦淫する行為は同罪を構成する。また、証人尋問の必要性は裁判所が判断すべきものであり、不必要な証人の申請を却下することは憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概…