判旨
警察による糧食差入禁止措置が取られた期間中に自白がなされた場合、その外形的事実から自白との因果関係や任意性への合理的疑いが生じ得るが、最終的には個別の証拠取調べに基づき任意性の有無を判断すべきである。
問題の所在(論点)
警察による糧食差入禁止という不当な処遇が行われた状況下でなされた自白について、その外形的状況のみから直ちに任意性を否定すべきか、あるいは因果関係の存否を慎重に検討すべきかが問題となる。
規範
自白の任意性(刑事訴訟法319条1項)の判断において、抑留・拘禁中の不当な処遇(糧食差入禁止等)が存在し、その期間と自白の時期が近接している場合には、外形的に当該処遇と自白との間に因果関係があることを推測させ、任意性に合理的な疑いを抱かせる事情となり得る。
重要事実
被告人が警察における勾留中に、昭和26年7月6日から12日午前までの間、糧食の差入れを禁止された事実が記録上認められた。被告人はこの差入禁止期間中またはその直後に自白をしており、弁護人はこの自白が不当な肉体的・精神的苦痛によるものであり、任意性がないと主張して争った。
あてはめ
本件では、差入禁止の期間と自白の日時が重なっていることから、外形的には両者の間に因果関係を推測させ、任意性に疑いを生じさせる事案といえる。しかし、差戻後の公判において改めて証拠取調べが行われた結果、諸般の事情を総合すれば当該自白の任意性は肯認できると判断された。最高裁も、外形的な疑いがあるからといって直ちに自白を証拠排除するのではなく、事実認定のプロセスを経て任意性を認めた原判決を維持した。
結論
糧食差入禁止と自白の間に外形的な因果関係が推測される場合であっても、公判における証拠取調べの結果、任意性が認められるのであれば、当該自白を証拠として採用することは適法である。
実務上の射程
自白の任意性を争う際の「不当な抑留・拘禁」の具体例(糧食差入禁止)を示す。答案上は、不当な処遇と自白の時期の近接性から「心理的強制」の存在を推認する際の判断要素として活用できるが、結論は個別具体的な取調べ状況に依存することに留意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)3343 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い抑留又は勾禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、事実の内容や手続の経過等を総合的に勘案して判断されるべきである。また、自白以外の証拠により犯罪事実を認定し得る場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が司法警察官に対して行った…