判旨
差押標示がなされた立木につき、伐採に関する禁止のみが解除された場合であっても、伐採された立木自体に対する執行吏の占有は継続し、その効力は失われない。
問題の所在(論点)
刑法96条(現行の封印等破棄罪、旧・差押標示無効罪)の客体に関連し、仮処分の執行が一部(伐採)取り消された場合において、伐採された立木に対する差押標示の効力および執行吏の占有が継続するか、あるいは無効となるかが問題となる。
規範
強制執行または仮処分において、物の処分禁止および占有の移転を命ずる差押標示がなされた場合、その後に執行の一部(伐採等)が取り消されたとしても、当該物の占有が依然として執行吏に帰属すると認められる限り、差押標示の効力は存続する。
重要事実
被告人ら15名は、松立木の売買、譲渡、伐採、搬出その他一切の処分を禁止し、かつ占有を執行吏に帰属させる内容の差押標示(仮処分)がなされた立木に関し、後に当該仮処分の執行が取り消された。しかし、その取消しの範囲は「伐採」に関する部分のみに限定されており、伐採された後の立木についての搬出や処分を認めるものではなかった。
あてはめ
本件における差押標示の内容は、立木の処分禁止のみならず、占有が執行吏に属することを明示するものであった。仮処分の執行取消しによって伐採禁止の部分が解除されたとしても、それは伐採行為を許容するにすぎない。伐採された立木自体については、依然として執行吏の占有下にあると解するのが相当であり、差押標示の基礎となる強制執行上の効力は失われていないといえる。
結論
仮処分の執行の一部が取り消されても、占有関係が継続している以上、差押標示の効力は維持される。したがって、これを損壊する等の行為は差押標示無効罪を構成する。
実務上の射程
本判決は、差押えや仮処分の執行が一部解除された場合の標示の効力範囲を画定したものである。答案上では、刑法96条の「差押えの標示」の有効性を検討する際、執行手続の部分的瑕疵や一部取消しが直ちに標示の効力を喪失させるものではなく、執行吏による占有の成否という実態に即して判断すべきとする論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4915 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
一 建物について執行吏の占有保管に移す旨の仮処分の執行がなされ執行吏の公示書には「本件建物は仮処分申請事件につき仮処分の執行をした、何人も該建物を処分し又は此の公示書を破棄してはならない」旨掲記され、右仮処分の執行に際し、執行吏は被申請人に対し右仮処分の要旨を示した上、本件仮処分の物件は執行吏の占有に移つたからこれを処…