判旨
判決主文において特定の事実に対する刑の表示がなされていれば、理由中で併合罪として処理されている別の事実についても、主文の表示に包含された有罪の言い渡しがあったと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
判決主文において特定の罪のみが掲げられている場合に、理由中で併合罪として示された他の罪についても有罪の言い渡しがあったと認められるか。また、その事実に基づき没収を科すことができるか。
規範
判決の主文に特定の犯罪事実(第四の罪)に対する刑が示されている場合であっても、判決理由において別の犯罪事実(第五の罪)が認定され、かつ両者が併合罪(刑法45条前段)として処断される旨が明示されているときは、主文の表示は後者の事実をも含めた有罪の言い渡しであると解釈する。
重要事実
被告人は複数のたばこ専売法違反に問われた。原判決の主文では「判示第四の罪につき懲役三月」と表示されていたが、判決理由では、第四の事実と第五の事実(製造たばこ501個の所持・販売準備)の双方を認定していた。さらに理由は、これら二罪を併合罪として処断し、その結果として懲役三月に処すると判示していた。被告人は、主文で言及のない第五の事実に基づき、証拠品であるたばこを没収されたことの違法性を争った。
あてはめ
原判決の理由を確認すると、第五の事実に係る罪が認定され、第四の罪との併合罪として刑法47条に基づき加重し、一括して「懲役三月」の刑期を導き出している。この論理過程は判文上明らかである。そうであれば、主文の「判示第四の罪につき懲役三月」という表示は、理由中の判断と整合的に読み解くべきであり、併合罪の関係にある第五の事実をも含んだ有罪の言い渡しと解される。したがって、有罪の言い渡しを前提とする没収の言い渡しも適法である。
結論
主文の表示は、理由中で併合罪とされた事実をも含む趣旨と解され、当該事実に基づく没収の言い渡しは正当である。
実務上の射程
判決書の主文と理由が食い違うように見える場合でも、理由中の認定・法令適用から主文の真意が合理的に特定できるのであれば、主文の表示不足を理由に直ちに無罪や違法とはならない。答案上は、判決の「一意的確定」の観点から、主文と理由を一体として解釈する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5339 / 裁判年月日: 昭和29年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】追徴の言渡しをする際には、その根拠となる理由を判決に明示する必要があり、理由の説示が不十分な場合には理由不備の違法が生じる。 第1 事案の概要:第一審判決が被告人に対して追徴の言渡しをしたが、その際、追徴の根拠や算出根拠等に関する説示が不十分であった。これに対し、原判決(控訴審)は第一審判決に理由…