塩酸ジアセチルモルヒネは麻薬取締法一二条中の「その塩類」に当るこというまでもない。
塩酸ジアセチルモルヒネは麻薬取締法第一二条中の「その塩類」に当るか
麻薬取締法12条
判旨
麻薬取締法(現・麻薬及び向精神薬取締法)が規制対象とする薬物の「その塩類」には、当該薬物の化学的性質に基づく塩類が含まれることは明白である。
問題の所在(論点)
麻薬取締法12条(当時)における規制対象の定義において、「その塩類」という文言が、塩酸ジアセチルモルヒネを包含するか否かが問題となった。
規範
麻薬取締法上の規制対象とされる薬物の範囲において、法文に明記された薬物そのものだけでなく、付随的に規定される「その塩類」には、当該物質から化学的に生成される塩(えん)類が当然に含まれると解すべきである。
重要事実
被告人が塩酸ジアセチルモルヒネを所持・使用等した行為について、麻薬取締法違反として起訴された。弁護人は、塩酸ジアセチルモルヒネが同法12条(当時)に規定する「その塩類」に該当しないと主張し、法令違反を理由に上告した。
あてはめ
塩酸ジアセチルモルヒネは、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)の塩酸塩であり、化学的性質に照らしてジアセチルモルヒネの「塩類」に該当することは自明である。したがって、法が「その塩類」を規制対象としている以上、これを処罰の対象とすることは罪刑法定主義に反せず、法令の解釈として正当である。
結論
塩酸ジアセチルモルヒネは、麻薬取締法12条の「その塩類」に該当するため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
特別刑法における薬物規制の定義規定の解釈に関する極めて簡潔な判例である。答案上では、条文に「その塩類」等の包括的記載がある場合に、具体的な化学物質が当然にそれに含まれることを示す際の根拠として利用し得るが、現在は別表等でより詳細に指定されているため、解釈の一般論としての意義に留まる。
事件番号: 昭和27(あ)3941 / 裁判年月日: 昭和29年3月26日 / 結論: その他
一 審判の対象として認定されていない麻薬を没収した違法ある第一審判決を容認した原判決は、刑訴第四一一条第一号により破棄を免れない。 二 麻薬施用者たる医師が塩酸モルヒネ水溶液を中毒症状を緩和するため自己の身体に施用したとの犯罪事実を認定し、その供用物件として塩酸モルヒネ散を没収した違法ある第一審判決を容認した原判決は刑…