判旨
公務員が本来の職務の傍ら上司の命令によって従事している事務であっても、それが当該官職に付随して行われるものである限り、賄賂罪における「職務」に該当する。
問題の所在(論点)
上司の命令に基づき、本来の職務の傍ら従事している事務が、賄賂罪(刑法197条1項)における「職務」に該当するか。職務権限の範囲が問題となる。
規範
刑法197条1項にいう「職務」とは、公務員の一般的職務権限に属する事務だけでなく、これと密接な関連を有する事務、および上司の命令に基づき一時的に補助・担当する事務も含まれる。すなわち、法令上の直接の根拠がなくとも、当該公務員がその地位に基づき実質的に担当している事務であれば、職務権限の範囲内にあると解すべきである。
重要事実
被告人Aは、和歌山県技術吏員として林務課または林政課に勤務し、本来の職務に従事する傍ら、上司の命令を受けて昭和26年6月頃より農林漁業資金融通法に基づく融資に関する調査・報告・証明等の事務に従事していた。Aは、相被告人Bらが林道工事の施行中に融資の便宜供与を受けた謝礼、あるいは将来の便宜を依頼する趣旨で提供した賄賂であることを知りながら、これを受領した。Bは、当該賄賂を提供した。
あてはめ
被告人Aが従事していた融資に関する調査・報告等の事務は、法令上の本来の職務ではないものの、和歌山県技術吏員という地位にある者が、上司の具体的な命令を受けて継続的に実施していたものである。このような事務は、当該公務員の地位に付随して実務上担当すべきものとなっており、事実上の職務権限が認められる。したがって、当該事務に関して利益を授受することは、公務の不可買収性に対する社会の信頼を損なうものであり、「その職務に関し」賄賂を収受したものと評価できる。
結論
被告人Aによる賄賂の収受は、その職務に関するものといえ、収賄罪が成立する。また、提供したBには贈賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、賄賂罪における職務権限を形式的な法令上の根拠に限定せず、実質的な担当事務(具体的職務権限)まで広げて捉える実務の立場を裏付けるものである。答案上は、職務権限の有無が争点となる場合に、本来の職務だけでなく「上司の命令による補助的・付随的業務」についても、その実態に着目して肯定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)4058 / 裁判年月日: 昭和35年6月21日 / 結論: 棄却
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