判旨
刑事裁判において類似の他事件が無罪で確定したとしても、個々の事件につき証拠に基づき判断されるべき性質上、当該事件で有罪とすることが直ちに憲法14条の法の下の平等に反することにはならない。
問題の所在(論点)
類似の別事件において無罪が確定している場合に、当該事件において被告人を有罪とすることが、憲法14条の「法の下の平等」に違反するか。
規範
刑事裁判においては、個々の事件について証拠により具体的に判断し、妥当な処置を講ずべきものである。したがって、ある被告人の事件と類似する他の事件が既に無罪として確定していたとしても、そのことのみをもって当該被告人が同様の処遇(無罪)を受けなければ憲法14条に違反するということはできない。
重要事実
被告人の有罪を認めた原判決に対し、弁護人は、本件と類似する他の被告人の事件において無罪判決が確定していることを理由に、本件の有罪判決は憲法14条の平等原則に違反すると主張して上告した。また、検察官作成の供述調書について、弁護人の同意がないまま証拠採用された点についても証拠能力を争った。
あてはめ
刑事手続における適正な事実認定は、当該事件に顕出された証拠に基づき個別具体的に行われるべきものである。本件において、原審は差戻後の第一審が掲げた証拠群によって被告人の有罪を認定し得ると判断しており、証拠に基づく個別の事実認定がなされている。他事件の結果に拘束されず、証拠によって具体的に判断することは刑事裁判の本旨であり、他事件との結論の不一致は直ちに憲法違反を構成しない。
結論
類似の他事件が無罪であるからといって、本件被告人も同様に無罪の処遇を受けなければならないわけではなく、憲法14条違反には当たらない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(れ)1298 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
一 昭和二〇年勅令第五四二号が旧憲法第八条の緊急勅令として法律と同一の効力を有したこと、且つそれが後に国会の承諾を得て引続き今日に至るまで有効に存続してあるものであることは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二七九号同二三年六月二三日大法廷判決)の示す通りである。従つてその委任に基いて制定せられた麻薬取締規則が有効であ…
共犯事件や類似事案で判決が分かれた際の平等原則違反の主張に対する反論として活用できる。刑事裁判の個別性・証拠裁判主義を強調する射程を有する。
事件番号: 昭和27(あ)5760 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】おとり捜査によって犯罪が誘発されたとの主張は、原判決の認定事実にない限り前提を欠く。また、共同被告人間に刑の軽重の差異があっても、直ちに憲法14条の平等原則に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が、自らの所為がいわゆる「おとり捜査」によって誘発されたものであると主張し、それが憲法11条…
事件番号: 昭和26(あ)4843 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れがなく、中立公正な立場において裁判を行う裁判所を指すものであり、量刑が不当であるとの主張は、同項の趣旨に反するとの憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、第一審判決の量刑を不当として控訴したが、原審(控訴審)においても量刑…