原判決の認定によれば、本件行為は、被告人等が、判示のような邪推の下に、被告人と同じく日傭労務者で判示a労働組合の組合員である判示Aを排斥し連絡員を辞職せしめるためになされたというのであるから、右が労働組合法一条一項所定の目的達成のために為された行為に当らないことは明白であり、従つて本件につき同法一条二項を適用しなかつた原判決には所論のような違法はない。
労働組合法第一条第二項を適用すべき場合にあたらない一事例
労働組合法1条2項,刑法35条
判旨
労働組合法1条2項の刑事免責が認められるためには、当該行為が同条1項所定の「労働組合の目的を達成するためにされた行為」に該当する必要がある。組合員を排斥し、役職を辞職させる目的で行われた行為は、正当な組合活動とはいえず、同項の目的達成のための行為には当たらない。
問題の所在(論点)
組合員を排斥し、辞職を迫る目的で行われた行為が、労働組合法1条1項所定の「労働組合の目的を達成するためにされた行為」として、同条2項の刑事免責(正当行為)の対象となるか。
規範
労働組合法1条2項による刑法35条(正当行為)の適用(刑事免責)を受けるためには、当該行為が同法1条1項に規定する目的、すなわち「労働者が専ら経営者との交渉において対等の立場に立つことを促進することによりその地位を向上させること」等の目的を達成するためになされた正当な行為であることを要する。
重要事実
被告人らは、日雇労務者であり、同じ労働組合の組合員である被害者Aに対し、根拠のない邪推に基づいて排斥を図った。被告人らは、Aを連絡員の職から辞職させることを目的として、本件暴行・脅迫等の行為に及んだとされる。
あてはめ
本件行為の目的は、特定の組合員を個人的な邪推に基づいて排斥し、その役職を辞職させる点にある。このような行為は、労働者の地位向上や使用者との対等な交渉促進という労働組合の本来的かつ正当な目的とは無関係である。したがって、被告人らの行為は労働組合法1条1項所定の目的達成のためになされたものとは明白に認められない。
結論
本件行為には労働組合法1条2項が適用されず、刑法上の正当行為として免責されることはない。
実務上の射程
労働組合法上の刑事免責の限界を画した事例である。団体行動の態様(手段の相当性)以前に、その「目的」が同法1条1項の趣旨に照らして正当でない場合には、直ちに免責の対象から除外されることを示している。組合内部の抗争や個人的な排斥目的の行為に免責を認めない実務上の指針となる。
事件番号: 昭和31(あ)686 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和32(あ)2119 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】恐喝罪の成否において、記事の掲載が専ら公益を図る目的であり、かつ内容が真実であると誤信していたとしても、害悪の告知による財物交付の要求が認められる限り、直ちに違法性が阻却されるものではない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の記事を新聞等に掲載することを背景に、相手方に対して何らかの要求…
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スト支援者が会社の構内において争議中の労組員ら六、七〇名と共謀し、たまたま五・三〇記念大会視察中の巡査部長を取り囲み、多衆の威力を背景にして身体または自由に対し危害を加えかねまじき気勢を示して脅迫を続け、取り上げた警察手帳を読み上げたりした上強要して詫状を書かせ、これを参集者に向つて読み上げさせた後、強いてデモ隊の中央…