二人共謀の上通行人に暴行、脅迫を加えて金員を要求し、因つて畏怖した被害者が所持の手提鞄中の財布(現金約二万三千円在中)から現金数百円を交付しようとして取り出した際犯人の一人が右財布ごとこれを奪い去つたときは窃盗罪ではなく恐喝一罪を構成する。
恐喝罪が成立する一事例
刑法235条,刑法249条
判旨
恐喝の手段として行われた脅迫行為とその後の財物奪取が密接に関連し、一連の行為として評価できる場合には、窃盗罪と恐喝未遂罪の併合罪ではなく、恐喝罪の一罪のみが成立する。
問題の所在(論点)
恐喝の意図をもって脅迫を行った後、被害者の占有する財物を取得した行為について、恐喝未遂罪と窃盗罪の併合罪となるのか、あるいは恐喝既遂罪の一罪として処断されるべきかが問題となる。
規範
恐喝罪(刑法249条)が成立するためには、人を畏怖させるに足りる脅迫を行い、それによって被害者の畏怖に基づく財物の交付(処分行為)がなされる必要がある。もっとも、一連の暴行・脅迫が、相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のものであり、かつその行為を手段として財物を取得したといえる場合には、行為の態様や時間的・場所的連続性を考慮し、包括的に恐喝罪の一罪として評価するのが相当である。
重要事実
被告人が、被害者に対して脅迫行為に及んだが、その場では直ちに財物の交付を受けられなかった。その後、被害者が畏怖している状態に乗じて、あるいは一連の流れの中で、被告人が被害者の財物を取得した。第一審はこれを恐喝未遂罪と窃盗罪の併合罪としたが、原審はこれを取り消し、包括的に恐喝罪の一罪が成立すると判断した。
あてはめ
判決文からは具体的なあてはめの詳細は不明であるが、原審は証拠調べを通じて、被告人の行為が単なる窃盗にとどまらず、先行する脅迫行為と密接に関連していることを認定した。被告人の脅迫によって被害者が畏怖し、その状態を利用して財物が取得されたのであれば、それは恐喝の実行行為と結果との間に因果関係を認めるに足りる。したがって、窃盗罪の成立を是認する余地はなく、一連の行為を恐喝罪として包括的に評価した原審の判断は正当であるといえる。
結論
本件行為は、包括的に恐喝罪(刑法249条1項)の一罪を構成し、窃盗罪との併合罪とはならない。
実務上の射程
本判決は、恐喝罪における交付行為(処分行為)の認定において、被害者の明示的な「差し出し」がなくとも、畏怖状態に乗じた財物奪取を広く恐喝罪として捉える可能性を示唆している。実務上は、窃盗と恐喝の境界線が争われる場面で、犯行の一連性に着目して重い恐喝罪を適用する際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和29(あ)3555 / 裁判年月日: 昭和30年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪等の領得罪における「不法領得の意思」とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用し、又は処分する意思を指す。 第1 事案の概要:被告人らは、被害者から物件(物件の詳細は判決文からは不明)を取り上げた。原審は、被告人らが当該物件を自己の所有物と同様に利用、または…