原判決判示のいわゆる火焔電球(起訴状記載の火焔瓶)が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらないことは、本件火焔電球とほぼ同様の構造、性能のいわゆる火焔瓶についての昭和二九年(あ)第三九五六号同三一年六月二七日言渡大法廷判決の判示に徴して明らかであるから、論旨は理由がない。(記録を調べると、本件火焔電球は、その構造、性能において、右大法廷判決が爆発物にあたらないと判示した火焔瓶よりも小さく、かつ、劣つていることが認められる。)
いわゆる「火焔電球」は爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたるか
爆発物取締罰則3条
判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、同罰則の制定経緯および他法令との関係から、破壊力を有する火薬等を用いた兵器類に匹敵する程度の威力を持つものに限定される。火焔電球(火焔瓶)は、その構造および性能が右基準に達しないため、同罰則上の爆発物には該当しない。
問題の所在(論点)
火焔瓶、特に本件のような「火焔電球」が、爆発物取締罰則1条にいう「爆発物」の意義に該当するか。
規範
爆発物取締罰則1条にいう「爆発物」とは、火薬・炸薬その他の爆発物の爆発作用による破壊力を利用して、人の生命、身体、財産を害し、または公共の安寧を乱すに足りる威力を持つものを指す。その判断にあたっては、当該物件の構造、性能、爆発時の破壊力の程度を、本罰則が本来対象としていた兵器類等との比較において検討すべきである。
重要事実
被告人らは、いわゆる「火焔電球(起訴状記載の火焔瓶)」を使用した行為により爆発物取締罰則違反で起訴された。本件の火焔電球は、先行する大法廷判決(昭和31年6月27日)で爆発物にあたらないとされた火焔瓶と同様の構造を有していたが、そのサイズはさらに小さく、性能も劣るものであった。
あてはめ
先行する大法廷判決によれば、一般的な火焔瓶であっても爆発物取締罰則上の爆発物にはあたらない。本件の火焔電球は、その大法廷判決が対象とした火焔瓶よりも構造が小さく、性能においても劣っている。したがって、火薬等の爆発作用によって公共の安寧を乱すほどの強力な破壊力を有するものとは評価できず、同罰則の適用対象となる爆発物の概念には含まれないと解される。
結論
本件火焔電球は爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらない。したがって、同罰則違反の成立を否定した原判決は正当であり、検察官の上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は火焔瓶を爆発物取締罰則の対象外としたが、その後の立法(火炎瓶処罰法)により、火炎瓶の使用等は別途処罰対象となっている。司法試験においては、罪刑法定主義の観点から「爆発物」の概念を限定解釈する際の論証として、あるいは火炎瓶処罰法との適用関係を整理する際の前提知識として利用される。
事件番号: 昭和30(あ)3198 / 裁判年月日: 昭和34年12月22日 / 結論: 棄却
普通のラムネ瓶にカーバイト約四〇瓦を入れ、これに適量の水を注入しさえすれば数秒後に爆発するいわゆるラムネ弾(原判決の判文参照)は、いまだそれに水の注入がなくまたその一部に水を保持、流出させる装置がなされていなくても、爆発物取締罰則にいう「爆発物」にあたる。
事件番号: 昭和29(あ)599 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
本件の時限爆弾と称するもの(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたらない。
事件番号: 昭和29(あ)2970 / 裁判年月日: 昭和33年2月12日 / 結論: 棄却
銃砲刀剣類等所持取締令第二条は憲法第二九条に違反しない。