本件の時限爆弾と称するもの(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたらない。
爆発物取締罰則にいわゆる「爆発物」にあたらないとされた事例。
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則3条
判旨
爆発物取締罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起する物体であって、その爆発作用自体によって公共の安全を乱し、または人の身体財産を傷害損壊するに足りる破壊力を有するものを指す。製造された物体が、構造の脆弱さや工作の稚拙さゆえに、容器を破壊することさえできない程度の威力しか持たない場合は、同罰則の爆発物には該当しない。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則にいう「爆発物」の意義、および外形的に時限爆弾の形態を備えていても破壊力が極めて乏しい場合に同罰則の「爆発物」に該当するか。
規範
爆発物取締罰則における「爆発物」とは、①理化学上の爆発現象(物理的爆発または化学的爆発)を惹起するような不安定な平衡状態において薬品その他の資材が結合せる物体であって、②その爆発作用そのものによって公共の安全を乱し、または人の身体財産を傷害損壊するに足りる破壊力を有するものをいう。
重要事実
被告人らは、味の素の空罐に黒色火薬を入れ、硫酸と塩素酸加里等の反応により引火させる時限爆弾を製造した。しかし、当該物体は容器が脆弱な空罐である上、工作が稚拙であった。そのため、火薬の燃焼により発生したガスが上部の穴から急速に噴出してしまい、黒色火薬の配合不適正も相まって、完全な爆発に至らず容器を破壊することさえできない性能のものであった。
あてはめ
本件の時限爆弾とされる物体は、理化学上の反応を企図したものではあるが、容器が脆弱な味の素の空罐であり、工作も稚拙であるため、火薬の燃焼ガスが穴から噴出するにとどまる。また、火薬の成分配合も不適当で性能を十分に発揮できないものであった。そうすると、当該物体は自らの容器を破壊することさえ不可能であり、公共の安全を乱し、または人の身体財産を傷害損壊するに足りる破壊力(要件②)を備えているとは認められない。したがって、被告人らに爆発せしめる目的があったとしても、客観的に「爆発物」としての実体を備えていないと解される。
結論
本件物体は爆発物取締罰則にいう爆発物には該当しない。したがって、同罰則違反は成立せず、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
爆発物取締罰則は強力な処罰規定であるため、客観的な「破壊力」の有無を厳格に要求する。答案上は、火炎瓶(火炎瓶処罰法)などの類似概念との区別や、不能犯の議論、あるいは爆発物の定義を明示する場面で、この「破壊力の程度」に関する判断枠組みを活用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)2878 / 裁判年月日: 昭和28年11月13日 / 結論: 棄却
一 爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上のいわゆる爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において薬品その他の資料が結合せる物体であつて、その爆発作用そのものによつて公共の安全を攪乱し、人の身体財産を傷害損壊するにたる破壊力を有するものをいう。 二 本件の火焔壜(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物に該…
事件番号: 昭和29(あ)1964 / 裁判年月日: 昭和32年4月9日 / 結論: 棄却
原判決判示のいわゆる火焔電球(起訴状記載の火焔瓶)が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらないことは、本件火焔電球とほぼ同様の構造、性能のいわゆる火焔瓶についての昭和二九年(あ)第三九五六号同三一年六月二七日言渡大法廷判決の判示に徴して明らかであるから、論旨は理由がない。(記録を調べると、本件火焔電球は、その構造、性能にお…