一 爆発物取締罰則三条の罪が成立するためには、治安を妨げまたは人の身体財産を害する目的をもって、爆発物又はその使用に供すべき器具を製造、輸入、所持又は注文することを必要とし、かつ、それをもって足り、製造などをする者が、自ら直接その爆発物などを使用する意思であると、他人に交付して使用させる意思であるとを問うものではない。 二 爆発物取締罰則にいう爆発物は、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資料が結合した物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものであることを要し、かつ、それをもって足り、雷管その他の起爆装置が装備又は準備されていることを要するものではない。
一、爆発物取締罰則三条の罪の成立要件 二、爆発物取締罰則にいう爆発物の意義
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則2条,爆発物取締罰則3条,爆発物取締罰則5条,爆発物取締罰則6条,爆発物取締罰則7条
判旨
爆発物取締罰則3条の「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起する不安定な平衡状態にある物体であって、それ自体で破壊力を有すれば足り、起爆装置の装備等は不要である。また、同条の成立には、治安を妨げる等の目的をもって製造・所持等を行えば足り、自ら使用する意思か他人に使用させる意思かは問わない。
問題の所在(論点)
1.爆発物取締罰則3条の成立に、製造・所持者自身が直接爆発物を使用する意思が必要か。 2.同罰則にいう「爆発物」の意義、特に雷管等の起爆装置の装備が不可欠か。
規範
1.爆発物取締罰則3条の罪が成立するためには、治安を妨げ、又は人の身体財産を害する目的をもって爆発物等を製造、輸入、所持又は注文することで足りる。行為者が自ら直接使用する意思であるか、他人に交付して使用させる意思であるかは問わない。 2.同罰則にいう「爆発物」とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資料が結合した物体であって、その爆発作用自体によって公共の安全を乱し、又は人の身体財産を害するに足りる破壊力を有するものをいう。雷管その他の起爆装置が装備又は準備されていることは要しない。
重要事実
被告人が、治安を妨げ、または人の身体財産を害する目的をもって、爆発物(いわゆる火炎瓶等)を製造・所持したとして爆発物取締罰則3条違反等で起訴された。弁護人は、(1)同条の成立には自ら使用する意思が必要であること、(2)雷管等の起爆装置が備わっていないものは同条にいう「爆発物」に当たらないこと、などを主張して上告した。
あてはめ
1.罰則3条の文言及び趣旨に鑑みれば、一定の目的(治安妨害等)の下で製造・所持等を行うという客観的行為と主観的意図があれば足り、使用の主体が誰であるかは構成要件の成否に影響しない。 2.罰則3条と5条が、爆発物と「その使用に供すべき器具」を別々に規定していることから、爆発物本体が爆発現象を惹起し得る結合体であり、かつ破壊力を有する実質を備えていれば、未完成の状態(起爆装置欠如)であっても「爆発物」に該当すると解される。
結論
1.製造・所持者が自ら使用する意思か他人に使用させる意思かを問わず、同罪は成立する。 2.起爆装置が装備・準備されていなくても、物体自体に破壊力があれば「爆発物」に該当する。
実務上の射程
爆発物取締罰則の合憲性を前提とした上で、「爆発物」の定義と「目的」の内容を明確化した判例である。答案上は、火炎瓶等の危険物の該当性を判断する際、本件の規範を用いて、起爆装置の有無にかかわらず「理化学上の爆発現象」と「破壊力」の有無から定義に当てはめる。また、主観的要件として「自ら使用する意思」まで要求されない点に注意する。
事件番号: 昭和53(あ)949 / 裁判年月日: 昭和53年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現行憲法下でも効力を有し、同法2条の「治安ヲ妨ケ」という要件は明確性の原則に反せず、かつ同条は思想・信条を処罰するものではないため憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。弁護人側は、同罰則が明治時代に制定された太政官布告であり現行憲法下で…