公判調書の記載によれば、検察官が副検事に対する甲の供述調書外八点の証拠調の請求をしたところ弁護人は右請求に異議なく且つ証拠とすることに同意すると述べたので、裁判官は右検察官の請求を採用し提出された前記各書面を朗続したことが明らかであるときは、証拠決定記載がなくても、裁判所は前記書書面の証拠調をなす旨の決定をなし、これにもとずく証拠調が行われたものと認むべきである。
証拠調決定がなされたものと認められる一事例
刑訴法298条,刑訴規則190条,刑訴規則44条1項31号
判旨
刑法19条2項にいう「犯人」には共犯者も含まれ、被告人以外の共犯者に属する物であっても没収が可能である。また、没収の対象物は裁判所によって押収されている必要はない。
問題の所在(論点)
1. 刑法19条2項の「犯人」に共犯者は含まれるか。 2. 裁判所により押収されていない物件について没収を言い渡すことができるか。
規範
1. 刑法19条2項にいう「犯人」には、単独犯のみならず共犯者も含まれる。 2. 没収を言い渡すためには、対象物件が裁判所により押収されている物であることを要しない。
重要事実
被告人は、相被告人Bと共謀の上で密造酒を製造した。第一審は、密造酒製造に使用した物品および製造した密造酒の一部の換価代金(収税官吏が差し押さえた物件)について没収を言い渡した。弁護人は、これら物件の所有関係や、裁判所による直接の押収を経ていない点、憲法29条違反などを理由に没収の違法を主張して上告した。
あてはめ
1. 証拠によれば、没収対象となった物件は被告人および共犯者Bが共謀して製造に使用したもの、または密造酒の換価代金である。刑法19条2項の「犯人」には共犯者が含まれるため、被告人自身または共犯者Bのいずれかに属するものであれば、第三者の所有物として憲法29条の問題を生じる余地はなく、没収は適法である。 2. 没収の要件として、物件が裁判所によって押収されていることは必要とされない。本件では収税官吏による差押え等の経緯があるものの、裁判所が直接押収していないことは没収の妨げにならない。
結論
被告人または共犯者に属する物件であれば没収可能であり、また裁判所による押収は没収の前提条件ではないため、本件没収は適法である。
実務上の射程
共犯事件において、実行行為者以外の共犯者が所有する物件を没収する際の根拠として用いる。また、捜査機関が差し押さえているが裁判所が押収していない状態の物件(任意提出物や領置物を含む)の没収の可否が問題となる場面で、押収の存否が没収の効力に影響しないことを示す判例として重要である。
事件番号: 昭和27(あ)5977 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
没収を言い渡すためには、その物件が裁判所により押収されている物であることを要しない。