強盗強姦、強盗殺人等被告事件につき、無期懲役刑を言い渡した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
判旨
死刑の選択は、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等の諸般の事情を総合的に考察し、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。被害者が1名であっても、これらの情状により死刑が相当となる場合があるが、本件では殺害の計画性の程度や前科の性質等を考慮し、無期懲役とした原判決は維持される。
問題の所在(論点)
死刑選択の許容性を判断する際の基準(いわゆる永山基準)の再確認、および被害者が1名である事案において死刑を選択しないことが著しく正義に反するか。
規範
死刑制度を存置する現行法制下では、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害手段の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に被害者数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状等、各般の情状を併せ考察すべきである。これらに照らし、罪刑の均衡および一般予防の見地から極刑がやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択が許される。なお、被害者が1名であっても、諸般の情状により極刑がやむを得ない場合がある。
重要事実
被告人は、顔見知りの主婦を強姦・強取しようと企て、抵抗された場合には殺害することも辞さない考えで被害者宅に赴いた。数時間の雑談後、被告人は被害者を脅迫し、猿ぐつわや結束で自由を奪った上で現金約2万4000円を強取し、強姦した。その後、犯行発覚を防ぐため、持参した千枚通しで背中を4回突き刺し、さらに牛刀で頸部を2回刺して殺害した(強盗強姦・強盗殺人)。その他、別の強盗強姦1件および窃盗3件の余罪があった。一審は死刑としたが、二審は無期懲役を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件は、落ち度のない主婦を白昼自宅で襲い、執拗かつ残虐な方法で殺害したものであり、動機も卑劣で遺族の感情も峻烈である。被告人には性犯罪の前科もあり、責任は極めて重い。しかし、殺害の計画性については、凶器を途中で拾うなど当初から周到に準備されたとまでは言い難い。また、前科や余罪から性欲や物欲への親近性は認められるものの、生命を侵害する犯罪への傾向が顕著とまでは断じられない。加えて、成育状況や謝罪の意思といった主観的情状も酌むべき余地がある。これらを全般的に検討すると、死刑を回避した原判決が著しく正義に反するとまではいえない。
事件番号: 平成16(あ)2170 / 裁判年月日: 平成19年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗強姦・強盗殺人等の事案において、周到な準備に基づく確定的犯意、冷酷な殺害方法、遺族の峻烈な処罰感情、及び常習性を考慮し、第一審の死刑判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、3週間のうちに2名の女性を強姦または強姦未遂の上、ベルトでの絞殺や水没による窒息死という凄惨な方法で殺…
結論
被告人を無期懲役に処した原判決は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の判断枠組み(永山基準)を再確認した判例である。特に「被害者1名」の事案であっても、犯行態様や動機の悪質性次第では死刑が選択され得ることを示しつつ、他方で殺害の計画性や犯罪傾向の程度を慎重に評価し、無期懲役を維持する際のあてはめのモデルを示している。
事件番号: 昭和58(あ)581 / 裁判年月日: 平成2年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、殺害方法の執拗性・残虐性、被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状等、一切の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重いと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、農作業中の主婦を強姦目的で襲い、抵抗されたため頸部を強…
事件番号: 平成20(あ)552 / 裁判年月日: 平成23年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例(最判昭和58年7月8日等参照)に基づき、死刑選択の許容性を判断する基準を提示する。 第1 事案の概要:本件において、被告人ら3名は、以前から人命を軽視するような生活態度をとっていた。本件犯行は、犯行の隠蔽や逃走資金の確保といった身勝手な動機に基づくものである。犯行態様は極めて残虐かつ執拗であ…
事件番号: 平成4(あ)168 / 裁判年月日: 平成9年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、および被告人の前科等を総合的に考慮し、酌むべき事情を十分に考慮しても罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、常習累犯窃盗罪により懲役3年6月に処せられ、仮出獄中の身であった…