追加補正された訴因事実が有罪認定から除外された場合において,右訴因の追加補正措置につき憲法31条及び判例違反をいう主張が利益を欠くとして不敵法とされた事例
刑訴法312条
判旨
訴因の追加補正が審理を遅延させない限り、憲法37条の迅速な裁判を受ける権利に違反せず、また、追加補正された事実が最終的に認定から除外された場合は、当該手続の適法性を争う主張の利益を欠く。
問題の所在(論点)
訴因の追加補正が行われた場合に、憲法37条の「迅速な裁判」を侵害したといえるか、また、認定から除外された事実に関する手続の瑕疵を主張できるか(訴因変更の適法性と上告理由)。
規範
刑事訴訟法における訴因の変更(追加・補正)の可否およびその手続の適憲性は、それによって審理が不当に遅延し、憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」を侵害するか否かによって判断される。また、当該手続に関する適法性を争うには、その手続によって被告人が現実に不利益を受けるという主張の利益が存在することを要する。
重要事実
弁護人は、検察官が行った訴因の追加補正によって本件の審理が遅延したと主張し、憲法37条違反、および当該措置が憲法31条(適正手続)や判例に違反すると主張して上告した。しかし、記録上、当該訴因変更によって審理が遅延した事実は認められず、また、原審において追加補正された訴因事実は証拠不十分として認定から除外されていた。
あてはめ
本件では、記録を精査しても、訴因の追加補正という手続的介入によって具体的・客観的に審理期間が延長された事実は確認できない。したがって、迅速な裁判を妨げたとはいえない。また、追加補正された事実は原審において最終的に犯罪事実として認定されていないため、被告人にとって不利益な結果を招いておらず、当該手続の違憲・違法を主張する実益(主張の利益)は認められない。
事件番号: 昭和44(あ)2262 / 裁判年月日: 昭和47年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による上告理由のうち、憲法28条違反の主張は実質的な事実誤認または単なる法令違反にすぎず、判例違反の主張も事案を異にするため、刑訴法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:検察官が、被告人らによる行為の正当性に関する判断に憲法28条(労働基本権)違反および判例違反があるとして上告…
結論
本件各上告を棄却する。審理の遅延が認められず、かつ認定から除外された事実については主張の利益を欠くため、憲法違反および判例違反の主張はいずれも前提を欠き、採用できない。
実務上の射程
訴因変更に伴う迅速な裁判の侵害(憲法37条)を主張する際のハードルを示している。答案上は、訴因変更が適法であっても「被告人の防御権に実質的な不利益」が生じているか、あるいは「不当な審理遅延」を招いているかを具体的に論じる必要がある。本判例は、追加された事実が認定されなかった場合に主張の利益を否定する論法として活用できる。
事件番号: 昭和51(あ)108 / 裁判年月日: 昭和51年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する迅速な裁判の権利について、公判審理の経過や事案の内容に照らし、同条項に反するほどの遅延が認められない場合には、上告理由としての憲法違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反等に問われた事案において、第一審および原審の公判審理が行われた。弁護人は、その審理…
事件番号: 昭和27(あ)4473 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合等の活動が刑法上の正当行為(刑法35条)として違法性を阻却されるためには、その行為が憲法28条の趣旨に照らし、正当な団体交渉の目的達成のために必要かつ相当な範囲内で行われることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らの所為が刑法上の犯罪構成要件に該当する一方で、被告人側は当該行為が憲法2…
事件番号: 昭和40(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和41年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為としての適法性の限界を超えた違法な行為については、憲法28条による保障の対象外となり、刑事上の罪責を免れない。 第1 事案の概要:被告人らの行動が争議行為の一環として行われたが、その具体的な態様が問題となった事案。原審は、被告人らの行動をもって適法性の限界を超えた違法行為と判断し、有罪判決…
事件番号: 昭和50(あ)1861 / 裁判年月日: 昭和51年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意における憲法違反等の主張が、原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原判決及び一審判決の判断に、憲法37条1項(被告人の権利)や82条(裁判の公開)の違反、および判例違反があるとして上告を申し立てた事案。しかし、…