エレベーターのかごの側壁の一部を燃焼した行為につき現住建造物等放火罪が成立するとされた事例
刑法108条
判旨
マンションのエレベーター内において、側壁として使用されている化粧鋼板を燃焼させた場合、現住建造物等放火罪(刑法108条)の「焼損」にあたる。
問題の所在(論点)
エレベーターのかご内壁(化粧鋼板)の燃焼が、刑法108条の「建造物」の「焼損」にあたるか。特に、エレベーターという設備への放火が建造物自体の焼損といえるかが問題となる。
規範
刑法108条にいう「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、独立して燃焼を継続するに至った状態(独立燃焼説)を指す。また、建造物の一部が焼損したといえるためには、当該部分が建物の重要部分に該当するか、あるいは建物と一体不可分な関係にあることが必要である。
重要事実
被告人は、12階建て集合住宅であるマンションの内部に設置されたエレベーターのかご内で火を放った。その結果、エレベーターの側壁として使用されている化粧鋼板の表面約0.3平方メートルを燃焼させた。
あてはめ
本件マンションは12階建ての集合住宅であり、エレベーターはその内部に設置された不可欠な設備である。火は媒介物を離れてエレベーターの側壁である化粧鋼板に燃え移り、約0.3平方メートルを燃焼させている。エレベーターのかごは、建物の垂直移動を担う主要な機能を有しており、その側壁は建物と一体不可分な構成部分となっている。したがって、化粧鋼板が燃焼したことは、独立して燃焼を継続するに至ったものとして「焼損」に該当するとともに、建物自体の損壊と同視できる状態に至ったといえる。
結論
被告人の行為により現住建造物の構成部分が焼損したといえるため、現住建造物等放火罪(刑法108条)が成立する。
実務上の射程
本判決は、エレベーターのような建物附属設備への放火であっても、それが建物と一体不可分であれば「建造物」の焼損にあたることを示した。司法試験では「焼損」の定義(独立燃焼説)を述べた後、目的物が「建造物」の構成部分にあたるか(一体性・重要性)を検討する際の有力な先例として活用できる。
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