簡易裁判所裁判官がした勾留の裁判に対する特別抗告の適否(消極)
刑訴法429条1項,刑訴法433条1項
判旨
簡易裁判所の裁判官が行った勾留の裁判に対しては、刑訴法429条1項により地方裁判所に準抗告をすべきであり、これを経ずに直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
簡易裁判所の裁判官がした勾留の裁判に対し、地方裁判所への準抗告(刑訴法429条1項)を経ずに最高裁判所へ特別抗告を申し立てることの適否。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告は、同法により不服を申し立てることができない決定または命令に対してのみ認められる。これに対し、裁判官のした裁判について別途準抗告等の不服申立手段が用意されている場合には、当該手段を尽くす必要があり、直接の特別抗告は不適法となる。
重要事実
岡山簡易裁判所の裁判官が、労働基準法違反被告事件の被告人に対し、昭和62年6月11日に勾留の裁判を行った。これに対し、申立人は地方裁判所への準抗告の手続きを執ることなく、最高裁判所に対して直接、特別抗告の申立てを行った。
あてはめ
本件における勾留の裁判は、簡易裁判所の裁判官が行ったものである。刑事訴訟法429条1項2号は、裁判官がした勾留に関する裁判に対し、その裁判官が所属する裁判所に対応する検察庁の検察官または被告人等の申立により、当該裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に裁判の取消または変更を請求できる(準抗告)と規定している。したがって、本件裁判は「不服を申し立てることができない決定」(同法433条1項)には該当せず、準抗告の手続きを介さずに直接最高裁判所に不服を申し立てることは、同条が定める特別抗告の要件を欠くといえる。
事件番号: 昭和62(し)61 / 裁判年月日: 昭和62年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準抗告事件の決定を早急に行うよう求める特別抗告は、刑事訴訟法上の不服申立理由を欠くため認められない。 第1 事案の概要:岡山地方裁判所において係属中の勾留の裁判に対する準抗告事件について、申立人が「準抗告事件の決定を早急にせよ」との趣旨の裁判を求めて最高裁判所に特別抗告を申し立てた事案。 第2 問…
結論
本件特別抗告は不適法であり、棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判官の裁判(勾留、保釈、押収等)に対する不服申立ての構造を確認する基本判例である。答案上は、特別抗告の「補充性」を論じる際の根拠として活用できる。特に簡易裁判所の裁判官の処置であっても、まずは地方裁判所への準抗告が先行すべきことを失念しないよう留意が必要である。
事件番号: 平成5(し)64 / 裁判年月日: 平成5年7月19日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の手続においてされる裁判官の行為は、刑訴法四二九条一項二号にいう勾留に関する裁判には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である
事件番号: 昭和48(し)64 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官による逮捕状の発付は、裁判所による裁判ではなく裁判官による「裁判外の処分」に当たるが、これに対する準抗告(刑訴法429条1項)等の不服申立の道は法上存しない。 第1 事案の概要:申立人は、賍物収受被疑事件において簡易裁判所裁判官が発付した逮捕状に対し、準抗告を申し立てた。これを受けた原審(地…
事件番号: 昭和34(し)62 / 裁判年月日: 昭和35年1月26日 / 結論: 棄却
地方裁判所の一人の裁判官をもつて構成する裁判所としての押収物仮還付請求却下の裁判は、刑訴第四二九条にいう「その他の裁判官がした裁判」にはあたらず、これに対する抗告審は高等裁判所である。
事件番号: 昭和33(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条1項所定の勾留の事由の有無に関する原審の認定を不服とする主張は、適法な特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、被告人に対する勾留の事由が認められないとした原審の判断(勾留の取消しまたは執行停止等に関する判断と推測されるが、詳細は判決文からは不明)に対し、検察側あるい…