少年の再抗告事件につき事実誤認の疑いがあるとして原決定及び保護処分の決定が取り消された事例
少年法35条,少審規則53条2項
判旨
少年法35条1項所定の再抗告理由がない場合であっても、原決定に重大な事実誤認があり、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるときは、最高裁判所は職権で原決定を取り消すことができる。
問題の所在(論点)
再抗告理由である憲法違反や判例相反が存在しない場合において、重大な事実誤認を理由に、最高裁判所が職権で保護処分および原決定を取り消すことができるか。
規範
少年法35条1項の再抗告理由(憲法違反・判例相反)に直接該当しない場合であっても、保護処分の基礎となった非行事実に重大な誤認があり、かつ、その決定を維持することが「著しく正義に反する」と認められるときは、裁判所は職権により原決定および保護処分を取り消すことができる(少年審判規則53条2項、54条、50条参照)。
重要事実
少年は道路交通法違反(逆走)の非行事実により、家庭裁判所から交通短期保護観察の処分を受けた。少年は審判廷で事実を認めたが、後に「身に覚えがない」として抗告。しかし、原審(抗告審)はこれを棄却した。最高裁での調査により、交通事件原票の供述書欄に押捺された指印が少年のものとは別人であることが、鑑識の対照結果により判明した。
あてはめ
本件では、違反現場で作成された書類の指印が少年のものと一致しないことが客観的に証明されている。少年が審判で自白していたとしても、この指印の不一致は、少年が非行を行っていないことを強く推認させるものであり、非行事実の認定には「重大な事実誤認を疑うべき顕著な事由」がある。このような誤った事実認定に基づく保護処分を維持することは「著しく正義に反する」といえる。
事件番号: 昭和56(し)37 / 裁判年月日: 昭和56年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年を保護観察(短期)に付した保護処分が不当に重いという主張は、少年法35条1項に規定される抗告理由(憲法違反、憲法解釈の誤り、重大な事実誤認、法令の違反)には当たらない。 第1 事案の概要:少年に対し保護観察(短期)に付する旨の保護処分がなされた。これに対し、抗告人は憲法違反を名目として抗告を申…
結論
本件には重大な事実誤認があり、これを取り消さなければ著しく正義に反するため、原決定および保護処分の決定を取り消し、家庭裁判所に差し戻すべきである。
実務上の射程
少年の自白がある場合でも、客観的証拠により真犯人が別に存在する疑いが生じた際の救済を認めた事例。司法試験においては、少年法の救済手続や、刑事訴訟法における職権破棄規定の類推適用・解釈の問題において、適正手続きと正義の実現を優先する論理として引用できる。
事件番号: 昭和56(し)30 / 裁判年月日: 昭和56年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項の再抗告理由としての「判例違反」は、最高裁判所又は高等裁判所の判例に反する場合を指し、それ以外の裁判例への違反や単なる処分の不当の主張は、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:本件は、少年の保護処分等に関する決定に対し、抗告人が「判例違反」を理由として最高裁判所に再抗告を…
事件番号: 平成4(し)109 / 裁判年月日: 平成4年12月15日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項の再抗告として明らかに提出された申立書について、原裁判所がこれを不適法な「再度の抗告」と誤認して棄却したことは、少年法及び少年審判規則の解釈適用を誤ったものであり、著しく正義に反するため取り消されるべきである。 第1 事案の概要:少年は傷害等の非行事実により中等少年院送致の決定を受…
事件番号: 昭和58(し)30 / 裁判年月日: 昭和58年9月5日 / 結論: その他
一 少年法二七条の二第一項にいう「本人に対し審判権がなかつたこと・・・・を認め得る明らかな資料を新たに発見したとき」とは、少年の年齢超過等が事後的に明らかにされた場合のみならず、非行事実がなかつたことを認めうる明らかな資料を新たに発見した場合を含む。 二 少年法二七条の二第一項は、保護処分の決定の確定したのちに処分の基…
事件番号: 昭和59(し)20 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しが認められるためには、確定審判の非行事実の認定を覆すに足りる、審判権がなかったことを認め得る明らかな資料が必要である。本件では、当初の自白の任意性・信用性が高く、後出の否認供述や新証拠(ナイフ)に不自然な点があることから、同要件を充たさないと判断された…