国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対する不服申立の可否(補足意見がある)
憲法13条,憲法31条,憲法32条,憲法37条3項,憲法98条1項,刑訴法38条2項,419条,428条,刑訴費用等に関する法律8条2項
判旨
国選弁護人に支給すべき報酬額の決定は、刑事訴訟費用等に関する法律(刑訴費用法)に基づく裁判であって刑事訴訟法上の裁判ではないため、同法に基づく抗告等の不服申立ては許されない。
問題の所在(論点)
国選弁護人に支給すべき報酬額の決定(刑訴費用法8条2項)に対して、刑事訴訟法上の不服申立て(抗告等)をすることが許されるか。また、これを否定する解釈が憲法に違反しないか。
規範
国選弁護人の報酬決定は、刑訴費用法8条2項に基づく裁判である。これは刑事被告事件そのものに関する判断や訴訟手続上の付随的裁判(刑事訴訟法上の裁判)とは性質を異にするため、法に特段の規定がない限り、刑事訴訟法に準拠する抗告またはこれに代わる異議の申立ての対象とはならない。また、この解釈は憲法13条、31条、32条、37条3項、98条1項に違反しない。
重要事実
国選弁護人である抗告人が、裁判所による報酬額の決定に対し、不服申立ての途が設けられていないのは不当であるとして、刑事訴訟法上の抗告またはこれに代わる異議の申立てを求めた事案である。抗告人は、不服申立てが許されないとする解釈は適正手続や裁判を受ける権利等を保障する憲法各条項に違反すると主張した。
あてはめ
国選弁護人の報酬決定は、刑訴費用法という独立した法律に基づく裁判であり、被告人の有罪・無罪や公訴棄却といった刑事訴訟の本来的目的を達するための「刑訴法上の裁判」には当たらない。したがって、刑訴法が定める抗告等の不服申立手続が当然に適用されるものではない。報酬額の算定という裁判の性質に鑑みれば、別途の不服申立手段が用意されていないとしても、憲法が保障する適正手続や裁判を受ける権利、国選弁護人依頼権等の趣旨に反するとはいえない。
事件番号: 昭和62(し)70 / 裁判年月日: 昭和63年11月29日 / 結論: 棄却
国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対しては刑訴法に準拠する不服申立をすることは許されず、このように解しても憲法三二条、三七条三項に違反しない。
結論
国選弁護人の報酬決定に対し、刑事訴訟法に基づく不服申立てをすることは許されず、憲法にも違反しない。本件抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判所が決定する国選弁護人報酬の額に不満がある場合でも、刑事訴訟手続の中での争い(抗告・特別抗告)は封じられていることを示す。実務上は、国家賠償請求訴訟等による救済の可否が議論される場面での前提知識として活用される。
事件番号: 昭和28(し)27 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私選弁護人が公判期日に不出頭であった場合に、裁判所が新たに国選弁護人を選任し、当該国選弁護人が既提出の控訴趣意書に基づき弁論を行う手続は、憲法32条および刑訴法289条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の私選弁護人が、期日の変更請求等の適切な手続を怠ったまま、控訴審の公判期日に出頭しなかった…
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和47(し)16 / 裁判年月日: 昭和47年4月3日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りるものであること、同項後段の規定は、被告人が弁護人を依頼することができないときは、国に対し弁護人の選任を請求する権利があることを認めたものであつて国はかかる請求がなされたと…
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…