国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対しては刑訴法に準拠する不服申立をすることは許されず、このように解しても憲法三二条、三七条三項に違反しない。
国選弁護人に支給すべき報酬額の決定に対する不服申立の可否
憲法32条,憲法37条3項,刑訴法38条2項,刑訴法419条,刑訴法428条,刑事訴訟費用等に関する法律8条2項
判旨
国選弁護人に支給すべき報酬額の決定は、刑事訴訟費用等に関する法律(刑訴費用法)に基づく裁判であって刑事訴訟法上の裁判ではないため、刑事訴訟法上の不服申立ては許されない。
問題の所在(論点)
国選弁護人の報酬決定に対し、刑事訴訟法上の抗告またはこれに代わる異議の申立てをすることが許されるか。また、不服申立てを認めないことが憲法に違反するか。
規範
国選弁護人の報酬決定は、刑事訴訟法に基づくものではなく、刑事訴訟費用等に関する法律8条2項の規定に基づく独立した裁判である。したがって、これに対する不服申立てについては刑事訴訟法上の準用はなく、当該特別法に明文の規定がない限り、刑事訴訟法に準拠する抗告または異議の申立てをすることは許されない。
重要事実
国選弁護人が、自身に支給される報酬額の決定に対し不満を抱き、刑事訴訟法上の抗告または異議の申立てに準じた不服申立てを行った事案。抗告人は、刑訴費用法に不服申立手段の規定がない以上、刑事訴訟法を準用すべきであり、これが認められないのは憲法(13条、14条、31条、32条、37条3項等)に違反すると主張した。
事件番号: 昭和62(し)120 / 裁判年月日: 昭和63年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国選弁護人に支給すべき報酬額の決定は、刑事訴訟費用等に関する法律(刑訴費用法)に基づく裁判であって刑事訴訟法上の裁判ではないため、同法に基づく抗告等の不服申立ては許されない。 第1 事案の概要:国選弁護人である抗告人が、裁判所による報酬額の決定に対し、不服申立ての途が設けられていないのは不当である…
あてはめ
国選弁護人の報酬決定は、刑訴費用法8条2項を根拠とする裁判であり、刑事訴訟法上の手続の中でなされる裁判とは性質を異にする。刑訴費用法には当該決定に対する不服申立手続が設けられておらず、特別法において不服申立ての途を設けないことは、裁判の性質に鑑みれば立法府の合理的な裁量の範囲内といえる。したがって、刑事訴訟法上の救済手続を類推適用する余地はなく、憲法各条項にも抵触しない。
結論
国選弁護人の報酬決定に対し、刑事訴訟法上の不服申立てをすることは許されない。本件抗告は棄却される。
実務上の射程
国選弁護人の報酬決定の不服申立に関する判例である。行政訴訟(国家賠償請求等)の可否については直接触れていないが、刑事手続上の不服申立てが完全に否定されている点は、実務上、報酬額への異議提起の限界を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和51(し)22 / 裁判年月日: 昭和51年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟手続に関し判決前にした決定に対する異議申立てを棄却する旨の決定は、刑事訴訟法433条にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には当たらない。したがって、かかる決定に対して同条に基づく特別抗告を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:弁護人は、公判期日において、検察官…
事件番号: 昭和28(し)27 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私選弁護人が公判期日に不出頭であった場合に、裁判所が新たに国選弁護人を選任し、当該国選弁護人が既提出の控訴趣意書に基づき弁論を行う手続は、憲法32条および刑訴法289条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の私選弁護人が、期日の変更請求等の適切な手続を怠ったまま、控訴審の公判期日に出頭しなかった…
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…
事件番号: 昭和47(し)16 / 裁判年月日: 昭和47年4月3日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足りるものであること、同項後段の規定は、被告人が弁護人を依頼することができないときは、国に対し弁護人の選任を請求する権利があることを認めたものであつて国はかかる請求がなされたと…