逋脱犯の実行行為である「偽りその他不正の行為」についての判例違反の主張が欠前提処理された事例
所得税法238条,所得税法241条
判旨
税法上の逋脱犯における実行行為である「偽りその他不正の行為」には、作為のみならず、不作為による形態も含まれる。
問題の所在(論点)
税法違反(逋脱罪)の実行行為である「偽りその他不正の行為」に、不作為による行為が含まれるか。
規範
逋脱犯の構成要件である「偽りその他不正の行為」とは、税の徴収を免れるために行われる欺罔的・不正な工作を指すが、これは必ずしも積極的な作為に限られるものではない。納税義務を負う者が、その義務の履行を免れる目的で、必要な申告を行わず、または事実を秘匿する等の不作為によって納税を免れる行為も、同要件に該当し得る。
重要事実
被告人は、税法上の納税義務を負っていたが、これを免れる目的で何らかの行為(詳細は判決文からは不明だが、逋脱罪の成立が争われた事実関係)に及んだ。弁護人は、逋脱犯の実行行為である「偽りその他不正の行為」は作為に限定されるべきであり、不作為による逋脱は認められないと主張して上告した。
あてはめ
最高裁昭和42年11月8日大法廷判決は、逋脱犯の実行行為に不作為が含まれないという趣旨まで判示したものではない。したがって、法が禁じる「偽りその他不正の行為」の解釈として、作為か不作為かという形式的区別により不作為形態を一律に除外する理由はなく、実質的に納税を免れる不正な手段といえる不作為についても、同要件を充足すると解するのが相当である。
結論
逋脱犯の実行行為である「偽りその他不正の行為」には、不作為も含まれる。したがって、不作為による逋脱犯の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
本決定は、不作為による逋脱罪の成立を肯定した重要な先例である。答案上では、所得隠しのために申告書を提出しない(無申告)だけでなく、仮装・隠蔽工作を伴わない単純な不作為がどこまで「不正の行為」に含まれるかという議論において、本決定を根拠として不作為による実行行為性を肯定する。ただし、現代の租税法実務においては、単純無申告犯とほ脱犯が区別されている点に留意し、単なる不申告以上の「不正」の評価が不作為に認められるかという文脈で使用すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)893 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
現行所得税法第六九條第一項は詐僞その他不正の行爲によつて所得税を免れた行爲を處罰しているがそれは詐僞その他不正の手段が積極的に行われた場合に限るのである。それ故もし詐欺その他の不正行爲を用いて所得を秘し無申告で所得税を免れた者はもとより右規定の適用を受けて處罰を免れないのであるが、詐僞その他の不正行爲を伴わないいわゆる…